第66話 夜の準備
討伐依頼を受けたその夜、リオンは人気のない王都の外れへと足を運んだ。
月明かりに照らされた草原は静かで、虫の音だけが響いている。
「……よし、ここなら誰も見ていないな」
リオンは深く息を吸い込み、スキルを発動した。
「スキル《家移転》」
目の前の空間がゆがみ、セーフハウスのドアが現れる。
暗証番号を入力して中へ入ると、そこは見慣れた現代日本の安全な空間。
リオンは工房に向かい、棚から猟銃を取り出した。
分解し、点検し、油を差し直す。
次に弾薬。
金属の薬莢に火薬と弾丸を詰め、手際よく数十発を組み立てていく。
「魔物相手に必要以上の浪費はできない。だが……保険は多いほうがいい」
さらに、ボウガン用のボルト(矢)も木材加工機で削り、鉄製の矢尻を装着していく。
一本、二本……やがて床に並んだ矢は数十本に及んだ。
すべてを革袋と専用ケースに詰め終えたリオンは、息を吐いた。
「これでしばらくは戦える……」
外に出ると、夜風が涼しく頬を撫でた。
空には満天の星が瞬いている。
「次は街道だ……待ってろよ、魔物ども」
リオンは静かに笑みを浮かべ、再びセーフハウスを収納すると朝に王都へと戻っていった。




