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第54話 理由
王都での依頼を終え、リオンはリベストの街に戻った。
ゼルファ商会の作業場の片隅で、ゼルファが手を止めてリオンを見つめる。
「なあリオン……なんで、あんな小さな令嬢を助けたんだ?」
ゼルファの声には、単なる好奇心以上の真剣さが含まれていた。
リオンは少し俯き、言葉を選ぶように口を開いた。
「……死んだあの子に、似てたんだ」
ゼルファはその答えを聞くと、何も言わずにリオンの頭に手を置き、優しく撫でた。
「そうか……分かったよ、小僧」
その指先の温もりに、リオンは少しだけ心を安らげた。




