第52話 幻影絵本と願い
フィリップ男爵邸の書斎。
リオンは丁寧に箱型の幻影絵本を机に置き、男爵に向かって一礼した。
「完成しました。これが娘さんのための幻影絵本です」
リオンの声には、静かだが確かな自信が込められていた。
男爵は箱を手に取り、慎重に開く。
光と音がゆっくりと広がり、妖精や星座の物語が壁や天井に映し出される。
小さな冒険の物語が動きながら紡がれ、幻想的な光景が書斎を満たした。
「……素晴らしい……リオン殿、感謝します」
男爵は深く息をつき、目に光を宿した。
リオンは静かに頷き、言葉を続けた。
「ありがとうございます。しかし、お願いがあります」
男爵は少し眉をひそめる。
「娘さんの病状を少しでも良くしたいのです。自分が持っている薬を使った治療を行わせていただけませんか?」
フィリップ男爵の表情が一瞬強ばる。
しかし、リオンの真剣な眼差しと、少女への思いが伝わる。
男爵はしばらく沈黙した後、深く息をつき、頷いた。
「……わかった、リオン殿。娘のことは、どうか頼む」
リオンは静かに礼を返す。
心の中で決意を固め、少女を少しでも救うための準備を再確認する。




