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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田 ソラ


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第48話 王都での誕生日

 王都リヴェルン、レオナルド伯爵邸。

 大広間には色とりどりの花々と華やかな装飾が施され、家族や貴族たちの祝福の声が響いていた。

 その中心に座るのは、伯爵の愛娘。

 まだ幼い少女。

 彼女はきらきらと瞳を輝かせながら、期待に満ちた表情でリオンを見つめていた。


 リオンは慎重に箱型の幻影機を机に置く。

 一見するとただの木箱だが、その中には複雑な光源と投影板、そして音響装置が緻密に組み込まれている。

 静かに息を整え、リオンはスイッチを押した。


 柔らかな音色とともに、光が大広間を包み込む。

 壁や天井に映し出された光は星のように瞬き、やがて形を変えた。

 猫、小鳥、竜、そして妖精たち。

 光の中に命が宿ったかのように舞い踊る。


「わあ……きれい……!」


 少女は小さな手を叩き、目を丸くして光景に見入った。

 光が瞬くたびに形が変わり、まるで物語の世界が目の前に広がっていくようだった。

 妖精が星座を描きながら冒険する場面では、少女は思わず声を上げて笑う。

 小さな竜が星々の間を飛び交うと、周囲の大人たちも息を呑み、感嘆の声を漏らした。


「……これは、まるで魔法みたいだ」


 伯爵は感動を隠せず、誇らしげにリオンへ視線を向ける。

 隣で見ていたゼルファも目を丸くし、口元に笑みを浮かべた。


「小僧……やるな。これは芸術品だ」


 物語が進むごとに、少女は光の世界に夢中になり、時折手を伸ばして触れようとする。

 すると光の妖精たちは、まるで彼女の想いに応えるように動き、星の形を少しずつ変えていった。


 やがて物語が終わり、光と音が静かに消えていく。

 大広間には穏やかな余韻が残り、誰もがその幻想的な世界の名残に浸っていた。


 少女は輝く瞳のまま、リオンのもとへ駆け寄る。


「リオンお兄さん、また見たい!」


 リオンは微笑み、そっと彼女の肩に手を置いた。


「これは君だけの絵本だよ。お誕生日おめでとう」


 レオナルド伯爵も満足げに頷き、深い感謝の言葉を口にした。


「リオン殿、貴殿の技術と心遣いに感謝する。娘も、これ以上ない喜びを感じているようだ」


 リオンは静かに頭を下げ、笑みを浮かべる。

 そして心の奥では、すでに次なる構想を思い描き始めていた。


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