第47話 王都での依頼
王都リヴェルン。
リオンは馬車を降り、目の前にそびえる豪華な屋敷を見上げた。
手紙の差出人。レオナルド伯爵が、直々に彼を招いたのだ。
「リオン殿、ようこそお越しいただいた」
案内された執務室は、重厚な調度品と香木の香りに満ちていた。
伯爵は微笑みながら迎え、その表情には期待と、そしてわずかな好奇心が浮かんでいる。
「娘の誕生日プレゼントに、貴殿の幻影機を使って絵本のようなものを作れませんか?」
伯爵の娘はまだ幼く、目に映るすべてのものに輝くような興味を示す年頃だという。
リオンは静かに頷き、机の上に広げられたスケッチや物語のメモに目を通した。
「なるほど……光と音で物語を表現するわけですね。面白そうです」
微笑みながらそう言うと、リオンは伯爵と共に物語の構成を練り始めた。
登場人物、舞台設定、動物や魔物、そして星座のように形を変えていく幻想的な風景。
全てを光と音で描き出せるよう、綿密に設計を重ねていく。
リオンは箱型の幻影機を取り出し、光のパターンを操作しては音の演出を加えた。
伯爵もまた、娘の好みや性格を思い出しながら意見を添える。
「ここで小さな妖精が登場して、星座を描きながら冒険する形にしてはどうだ?」
リオンは頷き、光の投影を微調整する。
光が揺らめき、部屋の壁に妖精の姿が現れる。音と動きが重なり、まるで本当に生きているようだった。
何度も試作を繰り返した末、ついに完成した幻影絵本。
光と音が一つの物語を描き出し、星のように瞬きながら、動くキャラクターたちが冒険を紡いでいく。
「……これは、娘も喜ぶはずだ」
レオナルド伯爵は感嘆の声を漏らし、深く頷いた。
リオンは穏やかな笑みを浮かべ、静かに幻影機の箱を閉じた。




