第39話 初めての感謝
リオンとゼルファは、工房で完成させたクマ幻灯機とおもちゃライトを大きな箱に詰め込み、ハロルドの商会へと運び込んだ。
「さあ、全部でこれだけだ」
リオンは息を整え、箱を机に並べる。
ハロルドは目を丸くして数を確認し、笑みを浮かべた。
「おお……リオン、見事だ。街の客も喜ぶこと間違いなしだ」
数日後、街の広場で、子供たちがリオンのライトを手に取り、はしゃぎながら走り回る。
壁や天井に浮かび上がるクマ幻灯機の立体像に、歓声を上げる子供たち。
小さな手を振りながら笑顔で駆け回る様子を見て、リオンの心は温かくなった。
「……こんなに喜んでもらえるなんて」
リオンは小声で呟き、そっと拳を握った。
商人や親たちも興味を示し、次々と注文が入る。
ハロルドは満面の笑みでリオンに言った。
「見ろよ、リオン。お前の発明でみんなが笑っている。これは金より価値があるものだ」
リオンは頷き、ついに口にした。
「……ありがとう」
戦場で生き延びるだけの力ではなく、作ることで人を喜ばせられる力。
初めて、自分の手で世界を少し変えられたと実感する瞬間だった。
ゼルファは後ろで腕を組み、満足そうに笑っていた。
「ふむ……やはり、発明は楽しいな小僧」
リオンは笑みを浮かべ、街の喧騒の中で光るクマやライトを眺めながら、次なるアイデアを思い描いていた。




