第37話 評判と依頼
数日後、リオンは再びハロルドの商会へ呼ばれた。
帳簿を広げたハロルドは、開口一番笑顔を見せる。
「お前の作った“クマの幻灯機”と“おもちゃライト”、どちらも想像以上に評判だぞ」
「……本当に?」
リオンは首を傾げる。
ハロルドは立ち上がり、奥から子供連れの客の手紙を持ってきた。
「子供が大喜びで離さないそうだ。夜泣きが減ったとか、暗闇を怖がらなくなったとか、母親たちが絶賛している。それに“おもちゃライト”の方は、大人でも夜道に使えると好評だ。簡易的な携帯灯りとして重宝されてる」
リオンは少し驚いた顔をした。
「……攻撃用にはならないと思っていたけど……役に立つなら悪くない」
「役に立つどころか、商会としては是非とも“増産”してほしい。できれば、今の十倍は欲しいな」
ハロルドは真剣な表情で言った。
リオンは腕を組み、考え込む。
クマ幻灯機は手間がかかるが需要は確実にある。
おもちゃライトは構造が単純なので、量産が可能だ。
「……わかった。おもちゃライトを中心に作る。クマの方は少しずつ」
「助かる! いやぁ、まさかあの小僧がこんなヒット商品を作るとはな」
ハロルドは笑みを浮かべ、リオンの肩を叩いた。
リオンは少しだけ笑い、短く言った。
「次は、もっと面白いものを作ってみる」
こうしてリオンは初めて、自分の発明品が世に受け入れられ、人々の生活に自然に溶け込むのを実感した。




