第29話 街の探索
リベストの石畳を踏みしめながら、リオンは街の喧騒に目を光らせていた。
市場には野菜や果物、肉や魚が山と積まれ、威勢のいい声と客の呼びかけが入り混じる。
商人、職人、旅人、冒険者。あらゆる人々の匂いと息遣いが、この街を満たしていた。
「ここか……情報が集まる場所は」
心の中で呟きながら、リオンは視線を細める。
まず向かったのは宿屋や酒場。
張り出された依頼や、交わされる会話に耳を傾け、どんな仕事が出ているのかを確かめた。
小さな荷運びや護衛、伝言、簡単な護送。
どれも危険は少ないが、報酬もまた少ない。
しかし今のリオンにとって重要なのは金ではなく、人脈と情報だった。
街の動きを知り、誰が力を持ち、どこに危険が潜んでいるのかを把握する。
街角では、年老いた商人が若者に商品を売りつけている。
酒場では、冒険者たちが金貨を叩き合いながら噂話に花を咲かせている。
リオンはそれらすべてを観察し、頭に刻み込んだ。
途中、小さな揉め事にも出くわした。
商人と盗人がもみ合い、酔った男が路上で騒ぎを起こす。
リオンは距離を取りつつ、いつでも介入できる立ち位置を意識して動いた。
そして夕暮れ、街外れの倉庫街に足を運ぶ。
ここは商会の依頼や荷物の護送、倉庫管理の仕事が集まる場所。
人影に紛れ、耳を澄ませば欲しい情報はいくらでも手に入る。
安全に金を稼ぐだけではなく、次の一手を打つための手掛かりがここには揃っている。
リオンの口元に笑みが浮かんだ。
「よし……面白くなりそうだ」
こうして、自由に動ける街での新たな生活が幕を開けた。




