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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田 ソラ


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第28話 リベスト到着

 馬車が丘を下りると、石造りの城壁と高くそびえる門が視界いっぱいに広がった。

 リベスト。交易都市として名高いその街は、商人や旅人で賑わい、門前からすでに活気が溢れている。

 荷を運ぶ荷馬車の列、通行を待つ旅人のざわめき、威勢のいい売り声や笑い声。

 そのすべてが馬車の中にまで響き渡り、街の熱気を伝えてきた。


 やがて馬車は通行料の支払い所に辿り着く。

 衛兵がハロルドの通行証を確認し、リオンは用意していた銀貨を差し出した。

 硬貨の澄んだ音が鳴り、重厚な門がゆっくりと開かれていく。


 馬車が石畳を踏みしめ城門をくぐった瞬間、リオンの視界に広がったのは、森や田舎道とはまるで違う世界だった。

 市場の屋台に並ぶ色鮮やかな果実、角を曲がる騎士の甲冑の光、呼び込みの声が飛び交う大通り。

 人々の熱気と雑踏が渦を巻き、街そのものが生き物のように脈動している。


「ここが……リベストか」


 窓の外を見渡しながら、リオンは低く呟いた。

 戦場の喧騒とは異なるざわめき。だが、どこか似通った生の気配。

 胸の鼓動が自然と早まり、指先に力が入る。


 街中へと入りきったところで、ハロルドが真剣な眼差しを向けてきた。


「リオン殿。もし望むなら、我ら商会の仕事を手伝っていただけませんか? 取引の護衛や交渉、倉庫管理など……あなたの腕前なら十分にやれるはずです」


 リオンはわずかに考え込み、やがて首を横に振る。


「……いや、結構です。俺はただ、自分のやりたいことをやりたいだけです」


「そうですか……」


 ハロルドは少し残念そうに息を吐き、しかしそれ以上は何も言わなかった。

 無理強いはしない。その眼差しには、確かな敬意が宿っている。


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