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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田 ソラ


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第27話 馬車の中の会話

 夜明け前、リオンは馬車の中で静かに目を閉じていた。

 山中に置いてきたセーフハウスだが心配はいらない。


「……回収」


 小さく呟き、スキル《家転移》を意識的に発動する。

 瞬間、森に現れたセーフハウスは光に包まれ、完全に回収された。

 床下、工房、武器庫……すべてが記憶のまま、彼の意識下へ戻っている。


 安心を胸に、リオンは窓の外へ視線を移した。

 霧がかった森の小道、馬車の木軋り、遠くの小川のせせらぎ。

 そして隣に座るハロルドの顔を見て、微かに笑みを浮かべる。


「リオン殿……馬車からの景色はどうです?」


 ハロルドが静かに尋ねる。


「ええ、良い景色です……」


 リオンは短く答えた。

 馬車が揺れるたびに、二人の会話は自然と続く。

 商会の仕組み、街リベストの情勢、交易ルートや盗賊の活動、隣国の政治。

 ハロルドは惜しみなく情報を語り、リオンもまた、自らの戦場経験や狩猟・生存術の知識を少しずつ開示した。


「……なるほど。年齢を十歳と言っていたが、話していることはとてもそうは思えませんな」


 ハロルドは冗談めかして笑う。

 リオンも小さく笑みを返した。


「まぁ、旅をしてると年齢なんてどうでもいいですよ」


 馬車の中、二人の間には自然な信頼が芽生えていた。

 ハロルドにとっては、命を救った相手がこれほど冷静で知恵ある少年とは思わなかった。

 リオンにとっては、商人との情報交換が新しい世界での生存戦略を練るうえで貴重だった。


 数日後の夕暮れ前、馬車は街リベストの門が見える丘に差し掛かる。

 窓越しに町の灯を眺めながら、リオンは心の中で小さくつぶやいた。


「……街で生きて行くんだ」


 夜風に揺れる馬車の帆が、彼の未来を静かに告げていた。


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