第22話 俺の隠れ家
リオンが森の平地に姿を現したセーフハウスに一歩踏み込むと、懐かしい匂いが鼻をくすぐった。
そうだ。
ここは前世、俺が住んでいた家だ。
日本で、ただ静かに暮らしていた頃の自分の空間。
戦場も復讐も、まだ遠い夢のような日々がここにはあった。
まず目に入ったのは、壁に取り付けられたソーラーパネル。
昼間に太陽光を受けて蓄えた電力が、家中の機器を動かす仕組みだ。
ポンプが稼働し、近くの川から水をくみ上げ、ろ過機を通して飲み水として流す。
シャワーも浴びられ、洗濯機も動かせる。
文明の利器が、完全に揃っていた。
床下を覗けば、ペットボトルの水や食料、日用品が整理されている。
昔の自分がきちんと生活を考えていた形跡だ。
そして、倉庫の一角には武器庫があった。
前世に使っていた拳銃や猟銃が並び、弾薬や改造用の工具も揃っている。
隣には小さな工房があり、銃の改造や弾の精製も可能だ。
リオンは背筋を伸ばし、薄暗い光の中で手を伸ばした。
かつて自分が握った銃の冷たさ、戦場で使った感触が蘇る。
この家は、ただの隠れ家ではない。
戦い、狩り、生活をすべて回すための、自分だけの基地だった。
窓の外では、森の静けさと遠くの川のせせらぎ。
リオンは小さく笑った。




