第211話 精霊会談と、王の決断
王都ガルリオン中央広場。
円卓を囲み、精霊たちは光の粒となって浮かんでいた。
机の上にはお茶と菓子。
中央にはラミ。
リオンは王として、珍しく真正面から座っていた。
「……まず、聞かせてほしい」
リオンはゆっくり口を開く。
「君たちは、なぜそこまでリゼと子供。ゼオンに執着する?」
精霊たちがざわめく。
『生まれた』
『“精霊”を越えた』
『精霊と人の間に生まれた王』
ラミが首をかしげる。
「でもね、ゼオンは赤ちゃんだよ?」
その一言で、精霊たちの動きが止まった。
『……』
『弱い』
『壊れやすい』
リオンはそこで、はっきりと言った。
「だから、日本に避難させた」
精霊たちが一斉に光を強める。
「ここでは守れない」
沈黙。
しばらくして、年長らしき精霊が前に出た。
『王よ』
『我らは、子を奪うつもりはない』
『だが、我らの王が戻らぬなら均衡が崩れる』
リオンは目を閉じ、深く息を吸った。
「……分かった」
そして、宣言した。
「子供とリゼは戻す」
場がざわつく。
ガルヴァンが一歩前に出ようとしたが、リオンは手で制した。
「ただし、条件がある」
精霊たちが静まる。
「一つ。北部の森。旧狼族の里に結界を張れ」
「二つ。移動は、精霊専用の門のみ」
「三つ。門の設計と管理は、精霊自身で考えろ」
「四つ目は……」
リオンは、北の方角を見る。
「精霊以外、北部の森。旧狼族の里は禁足地とする」
リオンは断言した。
「許可なく入る者は、例外なく排除しろ」
ガルヴァンが腕を組み、低く唸る。
「……ゼオンの周りを精霊で固めるのか?」
「そうだ、精霊自身でゼオンを守ってほしい」
ラミが手を挙げた。
「精霊さん。森は、あなた達の遊び場でしょ?なんとかなるでしょ!」
精霊たちが静かになる。
『……』
『それは』
『確かに』
年長の精霊が、ゆっくり頷いた。
『王よ』
『我らは結界を張り門を作る』
『人の手を介さず』
『精霊のみが扱える道を』
リオンは、ようやく肩の力を抜いた。
「ありがとう」
数日後。
北部山岳地帯かつて狼族の里だった場所。
森はさらに深くなり、外周には見えない結界が張られた。
【禁足地:北部精霊領】
・立入禁止。
・王命。
王都では、精霊たちが小さな光の門を試作している。
ガルヴァンは報告書を見て、頭を抱えた。
「……リオン」
「なに?」
「またとんでもない前例を作ったな」
リオンは苦笑した。
「うん、分かってる」
遠く日本にいるはずのリゼとゼオンの顔を思い浮かべる。
「でもこれが一番、みんなが納得する選択だ」
精霊の光が、そっと王都の空に舞った。
こうして、精霊・人・王の妥協点が定まった。




