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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田 ソラ


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第208話 動画越しの平穏

 国政は完全にガルヴァンに丸投げされた。


「余は任せたぞ」


 そう言って王印を机に置いたリオンに、

ガルヴァンは一瞬だけ無言になり、次の瞬間、杖を折った。

 ガルヴァンはキレながら叫ぶ。


「当然だ、リオン。貴様は余計なことをするな!!」


 それが、今の最適解だった。


 リオンの一日は単純だった。


 朝、昼、夜。

 決まった時間に、日本側から届く一本の動画を見る。


 そこに映るのは病院の個室、清潔なベッド、穏やかな光。


 そして。


「……ゼオン」


 画面いっぱいに映る、小さな男の子。

 指をぎゅっと握り、意味もなく笑い、意味もなく泣く。


 隣には、少しやつれたが元気そうなリゼ。


「今日もよく寝てますよ」

「ミルクもちゃんと飲みました」

「体重、また増えました」


 日本語交じりの説明に、リオンは動画越しに何度も頷く。


「……よかった」


 それだけで、胸が軽くなった。


 ガルリオン共和国の王都では、精霊が空を舞い、エルフが歌い、議会が荒れている。


 だが、動画の中の世界は静かだ。


 銃声もない。

 政治もない。

 王もいない。


 ただ、父親と子供がいるだけ。


「……俺、逃げてるよな」


 リオンは独りごちる。


 王としては失格。

 父としては、最低限。


 それでもゼオンが笑うたび、リゼがカメラ越しに微笑むたび。


「今は、これでいい」


 そう思ってしまう。


 一方その頃。


 ガルヴァンは議会で机を叩いていた。


「王は“国家存続に必要な重要任務”に就いている!」


「それ以上の説明は不要だ!」


 誰も反論できなかった。


 できるはずがない。

 なぜならそれは事実だからだ。


 夜。


 リオンは最後にもう一度、今日の動画を再生した。


 ゼオンが寝返りを打ち、小さく息を吐く。


「……強くなれよ」


 誰に聞かせるでもなく、そう呟く。


「この国に、俺みたいな大人がいても……生きていけるくらいにな」


 画面を閉じ、リオンは深く息を吐いた。


 外では精霊が光り、国は揺れている。


 だが、今だけはこの静かな時間が、彼を支えていた。




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