第200話 ガルヴァン、森を見て頭を抱える
「……で?」
ガルヴァンは、ヘリから降りた瞬間、言葉を失った。
「……ここが?」
眼前に広がるのは、共和国の地図には存在しないはずの森。
しかも、ただの森ではない。
巨木。
発光する花。
空を舞う妖精。
魔力濃度は王都の数倍。
「旧・狼族の里……だったはずだな?」
横に立つリオンは、気まずそうに視線を逸らす。
「……そのはず」
「そのはず、で済む話かッ!!」
ガルヴァンの怒号が、森に響いた。
妖精が一斉に振り返り、『わー、怒ってるー』と囁き合う。
「誰が許可した」
「……自然発生?」
「自然発生で国土が変わるか!!」
ガルヴァンは額を押さえ、深く息を吸った。
「リオンよ」
「……なに」
「これは“現象”ではない。“事件”だ」
ガルヴァンは、杖で地面を突く。
「地形変化、魔力暴走、精霊集積。軍事・外交・宗教、全部に関わる」
リオンは、小さく頷いた。
「分かってる」
「分かっているなら止めろ!!」
「……止まらない」
その一言で、ガルヴァンは言葉を失った。
「……原因は」
リオンは、少しだけ間を置いて言った。
「……生まれる前から、王様らしい」
沈黙。
ガルヴァンは、ゆっくり振り返った。
「……子か?」
「……うん」
再び沈黙。
今度は長かった。
「………………」
ガルヴァンは、ゆっくりと腰を下ろし、
本気で頭を抱えた。
「王が、王を生むとはな……」
「ごめん」
「謝るな!!」
森の奥から、リゼたちが姿を現す。
「宰相様……」
ガルヴァンは立ち上がり、姿勢を正す。
「……無事そうで何よりだ」
声は威厳に満ちていたが、こめかみが引きつっている。
妖精が近寄ってくる。
『ねえねえ、偉い人!』
「なんだ」
『この森、王さまの場所だよ!』
「……そうだな」
ガルヴァンは、何食わぬ顔で答えたが、
内心では叫んでいた。
(そうであってたまるか!!)
「リオンよ」
「……はい」
「この森は、機密指定だ」
「え?」
「立入制限。地図から抹消。精霊が勝手に作った“聖域”という扱いにする」
「……それ、隠せる?」
ガルヴァンは、不敵に笑った。
「隠すのが、宰相の仕事だ」
そして、ぼそりと続ける。
「……だがな」
ガルヴァンは、リオンを睨んだ。
「次に何か生まれる時は、必ず事前に報告しろ」
リオンは、苦笑いした。
「努力する」
「努力……では困る!!」
森の奥で、妖精たちが拍手していた。
『わー!決まったー!』
『さすが宰相!』
ガルヴァンは空を仰ぐ。
「……国とは、難儀なものだな」
その日、ガルヴァンは正式に認めた。
この子は、生まれる前から国家案件である、と。




