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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田 ソラ


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第196話 結ばれてはならないという声

 噂は、静かに、だが確実に広がった。


「……王が、エルフと?」

「まさか……」

「いや、ありえないだろう」


 王都ガルリオンの片隅。

 酒場、工房、議会の控室、囁きは形を変えながら増殖していく。


 公式発表は、まだない。

 それでも“察した者”は多かった。


 エルフ族と人間。

 長命と短命。

 価値観も、時間感覚も、命の重さも違う。


 そして、何より過去の歴史があった。


「エルフと人間は、結ばれてはいけない」


 それは法律ではない。

 だが、長い年月で“常識”として根付いた言葉だった。


 共和国議会。


 非公式の場で、年配の議員が口を開く。


「リオン公王……この話、本当なのですか」


 リオンは、逃げずに答えた。


「事実だ」


 空気が、一段冷える。


「……お考え直しを」


「なぜだ」


 議員は、重く首を振る。


「人間とエルフの間に生まれた子は……」


「迫害される、か?」


 リオンの言葉に、議員は黙り込む。


「だが“現実”だ」


 別の者が続ける。


「混血はどちらの社会にも属せず、どちらからも拒まれてきました」


「共和国が、同じことをするのか?」


 リオンの声は、静かだった。


「……公王だからこそ、申し上げます」


 年配議員は、覚悟を決めたように言う。


「公王が例外になれば、共和国は割れます」


 その夜。


 リゼは、エルフ居住区で同胞に囲まれていた。


「リゼ……本気なの?」


「人間よ?」


「寿命が違うのよ」


 優しさを装った言葉。

 だが、その奥には恐れがある。


「あなたが年老いても、彼は……」


「分かっています」


 リゼは、静かに答えた。


「でも、それを理由に命を否定されるのは、違う」


 長老の一人が、厳しく言う。


「人間は変わる。だが、世界は変わらない」


「……なら」


 リゼは、腹部に手を当てた。


「変わらない世界の方が、間違っている」


 沈黙。


 誰も、すぐには反論できなかった。


 翌日。


 ガルヴァンは、リオンに報告する。


「人間側も、エルフ側も、反発が出ている」


「だろうな」


「だがな」


ガルヴァンは、腕を組み、偉そうに笑った。


「王ってのは、全員に好かれる仕事じゃねぇ」


「……分かってる」


「なら、やることは一つだ」


ガルヴァンは、指を立てる。


「“結ばれてはいけない”って考えを、国の方針で否定する」


リオンは、ゆっくりと息を吐いた。


 差別は、剣で倒せない。

 だが、放置すれば国を腐らせる。


「……共和国として、声明を出す」


「ほう?」


「種族間の婚姻を理由とした差別を、ガルリオン共和国は認めない」


 その言葉に、ガルヴァンは満足そうに頷く。


「王だな」


 一方、その決断は周辺国にも波紋を広げ始めていた。


「前代未聞だ」

「危険な思想だ」

「だが……」


 “新しい国”が、“新しい価値観”を掲げ始めた。


 それが希望になるのか、火種になるのか。


 まだ、誰にも分からない。


 ただ一つ確かなのはリオンはもう、後戻りできない場所に立っているということだった。




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