第12話 夜の小屋で
深夜、屋敷の灯りが消えた頃。
俺とアンセルは静かに墓地へ向かった。月明かりだけが足元を照らす。
シャベルを握り、冷たい土を掘り返す。
クラリス。
あの穏やかな顔、頼れる笑顔、すべてがここに埋まっている。
墓の土を掘り出すたび、心臓の奥が痛む。
しかし、理性は冷静だ。
俺は傭兵だ。感情に流されてはいけない。
アンセルと二人で遺体を慎重に抱え、近くの小屋に運ぶ。
屋敷から離れ、誰にも見られない安全な場所だ。
手袋越しに冷たい肌に触れる。
心の中では何度も「クラリス……」と呟くが、手は止まらない。
死体を検視する。
傭兵としての経験が、幼い体の感情を抑える。
首には二重線が刻まれていた。明らかに、誰かが縄で縛った跡だ。
顔には化粧が施されている。布で拭き落とすとそこには青黒いアザが浮かぶ。
太ももからは血が流れかたまり、手には小さなボタンが握られていた。
何かを必死に守ろうとした跡だ。
目を凝らす。何度も確認する。
これが事故ではないこと。これが、虐待と暴力の結果であることを。
冷たい小屋の空気に、俺の呼吸だけが響く。
憎悪と悲しみが入り混じり、心の奥で静かに爆発しそうになる。
傭兵としての理性が、幼いリオンの体を支える。だが感情はもはや抑えられない。怒りと絶望、そして問いかけ。
「なぜ……なぜ……クラリス……」
小屋の闇の中で、俺はひたすら観察し、記録し、そして復讐の道を心に描き始めた。
この事件を無駄にするわけにはいかない。




