第105話 共闘の訓練
翌朝。
狼族の集落は、戦いに備える緊張感に包まれていた。
族長ガルヴァンの命で、戦士たちはそれぞれ武具を手に広場へ集まり、リオンもそこへ呼ばれた。
「小僧、人の戦い方を見せてもらおう」
大柄な戦士が腕を組み、リオンを見下ろす。
リオンは静かにうなずき、布袋から猟銃を取り出した。
その形状に、狼族の戦士たちはざわめいた。
「それは……杖か?」
「いや、刃もない……」
リオンは的代わりに木の板を立てると、息を整え、引き金を引いた。
乾いた破裂音とともに木板が砕け、後ろの岩に弾痕が残る。
戦士たちは一斉に息を呑んだ。
「……雷の槍……!」
「人間の小僧が、こんな力を……!」
だがリオンは誇示するような顔をせず、落ち着いた声で言った。
「俺の武器は遠くから狙うのに強い。でも近距離では無力だ。だから狼族の戦士と一緒に戦えば、互いの弱点を補える」
族長ガルヴァンは興味深そうに頷く。
「なるほど……我らが前に出て敵を押さえ、お前が後ろから雷を放つか」
その言葉を合図に、訓練が始まった。
狼族は獣のような俊敏さで走り、斧や槍を振るう。
リオンはその背を狙撃の目印とし、次々と遠距離から弾を撃ち込んでいく。
戦士たちは最初こそ戸惑っていたが、次第に息が合い、互いに動きを合わせるようになっていった。
「リオン、次は右だ!」
「了解!」
的を正確に撃ち抜くリオンに、戦士たちの目が変わる。
ただの小僧ではなく、仲間として認め始めたのだ。
夕方、訓練を終えた広場で、族長ガルヴァンが満足げに笑った。
「よし、共闘の形が見えてきたな。……リオン」
その言葉に、リオンは少し照れたように微笑んだ。




