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誰か僕に呪いを解く意味を教えてください

作者: 三澄さや

ある一人の若い少年がいた。

彼は心意気や力も何も持ち合わせていない。


頭の悪い人間。


少年はそんな道端に生えた枯れた雑草のような人間だ。


生きていく為にはお金が無ければ食い物に困り野垂れ死ぬ。


こそ、金稼ぎをしなくてはならなかった。


脳を最大限に回転させて、決めた仕事は死亡率が高い職業、冒険者。


彼の名はアレクシスという。


少年は決めたことは必ず最後までやり抜く男だ。

だが誰も少年の事を必要とするはずは無い。


少年は冒険に必要な、木の枝にぶら下がれる長さの縄と短刀ナイフを買い昼下がりに森に入って準備をする。


そんな中、出会う。


何か秀でた者がある奴らでもないけれど、彼の人生に鮮やかな一瞬を与えた。




似た者同士の少年少女たちに。



リアスという名の赤髪の少年は、森の中にぽつりと居座る少年を見つけ心からほっとする。


(いた!やっと……見つけた、)


リアスは灰色の髪の少年、アレクシスの元に猛スピードで駆け寄り、後先考えず突っ走って話す。


『君も冒険者 ? !良かったら俺たちとパーティーを組んでほしいんだ !』


背が小さく短い茶髪の少女は、見覚えのある一人の男に駆け寄る、幼なじみに驚いた。服装は魔法使いだろうか、杖を持ち長めのローブを着ている。

『リアス!いきなりすぎるわ』


もう一人の少女も、アレクシスを見ている。

彼女も冒険者だろう、汚れ一つも無い白く潤沢な服装にキラキラと陽の光に杖の修飾が照らされている。言葉遣いから大人びていて彼女はどこかの聖女のようにも見える。


『ごめんなさいね、あの人強引なので……』


アレクシスは状況を理解出来なかった。

見知らぬ人がこんな魔物の住む森で声を掛けてきたからだ。

『……』


また一人増えた。背の高い青年だ、年齢は彼らと同じだろうか?顔から大量の汗がでている。息を荒らしながら言葉を発している。


『ったく !メリィ俺を置いてくなよな !』


聖女のような少女はメリィと言うらしい。

彼を見て呆れ顔で謝っている。

『すみませんでしたね、シリス』


無鉄砲に状況を考えずに話す青年。

『おっと、ん !お前誰だ ?』


体の大きい彼の名前はシリスと言うらしい。

茶髪の少女はシリスに腕を大きくあげて怒る。


『シリス話をややこしくしないで !』


慌てながらエリアに謝る。


シリスは頭の中でありとあらゆる記憶をほじくり返して思い出そうとする。


『ごめんよ ! !エリア……お前が渋い顔しているという事は、また、リアスがパーティーに誰かを誘ったとか ! ?』


リアスは即答し、自慢げに誘ったと仲間に話す。


『ご名答 !シリスそうだよ !僕は彼をパーティーに誘っているんだ !』



道端の彼は、彼らが自分を誘う意味が分からない。

『あの……なんで俺なんですか ?』


アレクシスは手を止め作業の物を地面に置く。



『それは、君と一緒に冒険をしたいから !』


『は ?』


満面の彼の笑顔と強く背中を押されるような言葉。


彼の全てが胸に打ち込まれていく。



『可笑しいでしょ ? !はは !俺みたいな力もない弱そうな奴を誘うなんて』


『……きみ、今、僕の事も自分の事も侮辱したな ! !』


何にも考えず言った言葉なのに。

道端で会った人に怒られた。



『……は ? ?』


どうして?何故、自分を侮辱するのが駄目なのか聞きたいのに。


僕は一方通行の言葉しか言えない。



『僕は思ったことを正直に言う強引な性格なんだ、悪いな、アレクシスそれを言ってしまったら自分が苦しいだろ、だからダメだ、自分だけは認めて信じてあげなきゃ辛いし悲しいから、誰にも認めてもらえないのは辛くて死にそうになるんだよ、』


彼の言葉が僕の心に何度も訴えてくる。


『なんだよ……いきなり現れたと思えば、なんなんだお前…… !このまま引き下がるわけにはいかないんだ !自分の事を大事にしたいって思う、けど俺にはそれができないし、例え誰からも認めてもらえなくても、俺の存在意義は自分で決める、だからお前にどうこう言われる筋合いなんて微塵もこれっぽっちも無い』


この煮えたぎらない気持ちの行く場所が僕には無いんだから。

分かってくれ、ほっておいてほしい。

忘れてほしい、知らなかったふりをしてくれ。


仲間たちは少年とリアスの事をひたすら見守る。


『だからどっかにいってくれ、もういいんだ』


『断る !』

『どっかいけ ! !消えろよ、お前には関係ない事だろうが !』


アレクシスの鋭い言葉にリアスは逸らさない。


『いかない、絶対に君から離れるものか』


『ごめん、例えどれだけの言葉を君から掛けられたとしても、これは、これだけは僕にしか出来ないことなんだ』


リアスの声、表情は、すべてを諦めたアレクシスにとって羨ましくほんの少しの勇気をくれた。


『君を理解してその鎖を解くのは、いつだって自分自身だ、誰かがしてくれるもんじゃない……アレクシス』


『なら俺はこれからどうしたらいいんだ』

『君は……アレクシスはどうしたい ?』



『俺は__』

『そうだ、僕は君と冒険をして生きたい』



『し……死に、死にたくねぇ』


リアスはただ強くあるだけ。


『言わなきゃならない事だから、言う !アレクシス、俺たちはみんな似た者同士で同じだと思うんだ、だから聞いてくれ、僕がアレクシスを選ぶ理由はただ一つ、惨めでもかっこいい、いい奴だからだ』


エリアも。

『知ってたわ、リアス』


シリスだって。

『こいつは根性あるかっこいいやつだもんな』


メリィは。

『勝てるわけない相手なのに困っている者に手を差し伸べる優しい人でした』


彼ら四人は知っていた、心の底から分かっていた。何ひとつたりとも諦めない奴らしかここにはいないことを。


リアスの声が仲間と共鳴する。

『もう一度言う ! !アレクシス俺たちと』


『パーティーをくんでください ! !』


アレクシスの心に彼らの想いが届いたのだ。


少年少女は一斉に満開に咲く笑顔を少年に贈って。


アレクシスの人生にとって。

生まれて初めて嬉しい事だった。

物心着く頃には一人だったから。

誰も隣に、俺の傍にいなくて。

一人は辛かった。


誰も俺が呪いがかかっていることは知らない。

自分で呪いをかけたから。


呪いの解き方が分からない事を自分で誇ってた。


俺は自分が掛けた呪いを解く。

解かなきゃならない。


こんなに優しい人達に仲間になってくれと言ってもらえたから。


だから俺は死なない、生きるよ。

例えどんなに惨めで愚かでも俺はあいつらと生きてみたいから。




少年は、ほんのわずかの涙を、幸せの一輪の花を咲かせて。

仲間と共に生きる、ただそれだけの為にに自分に掛けた呪いを打ち破る。

リアスの差し伸べる手まで、アレクシスは自分の足で一歩一歩、歩いていく。


『よろしく !』

微笑む少年は真っ直ぐ、未来を見ていく。


次は俺が誰かに手を差し伸べてみせる。

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