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第81話 エクストラステージ

 噂に聞くアレって何だろうと思いつつも、今は見守ることだけしかできない。

 蒼の王の巨体からすると、小さなマーモットなんて小虫程度の大きさでしかないのだ。

 蒼の王にとってマーモへの攻撃は小さすぎて当て辛いだろうが、逆にマーモからすると巨大過ぎて攻撃をしても爪楊枝でつんつんしたくらいにしかならないんだよな。

 俺が蒼の王なら、手足を動かしてヒットを狙うことは諦める。

 他の攻撃手段を持っていれば……だけど。

 だがしかし、蒼の王が強力なモンスターであれば、確実になんらかの手段を持っている。

 巨体を誇る蒼の王が小さすぎるターゲットに対する攻撃手段を持っていないのなら、ツインヘッドドラゴンとそう変わるものではないだろ。

 奴が強き者だというのならば、必ず何かある。

 それが何かは分からないけど……。

「ん、あれ……」

 蒼の王が全身を小刻みに震わせた。こいつはきっと何か来る!

 対するマーモは奴の頭から高く高く跳躍した。

 次の瞬間、青白いオーラのようなものが蒼の王の全身を包み込む。オーラの範囲は奴の体から数メートルにも及ぶ。

「アレに触れたら凍り付くぜ」

「ひええ……」

 グルゲルが嫌な事実を解説してくれた……。

 あのオーラは人間の冷気系の魔法やアーツ? のようなもので、触れると瞬時にカチンコチンに凍り付く。

 凍った時点で体組織が破壊されお陀仏になるが、ならなかったとしても、そのあと砕かれてバラバラになる。

 オーラの範囲は青の王の体全体から数メートルとなれば、どれほど小さな相手でも仕留めることが可能だろう。

 マーモはオーラの外まで高く飛びあがりっているので、今のところは無事だ。

 しかし、飛行できるわけじゃないので落ちてきたらオーラに触れるし、うまく逃げることができたとしてもオーラが3メートルとなれば、オーラの外からマーモの蛍光灯を青の王まで届かせることができない。

 リーチが短く、遠距離攻撃を持たないマーモにとっては、完璧な対策を取られたと言える。

「なんとかマーモを援護する手は……」

 魔法も遠距離武器も使えない俺に打てる手がない。遠距離攻撃が必要になる事態を想定していないわけじゃなかったけど、優先順位が低かったんだよな。

 魔法は習得方法が不明。恐らく魔法を使うことができそうな名前の職業につけば習得できる、はず。

 遠距離武器に関しては、まともに射撃するのがとても難しい。銃系は武器リストにないので、取れる手段が弓、ブーメラン、スリング辺りになる。

 この中だと弓カテゴリーの中にあるボウガンが一番マシかなあ。

 ボウガン、別名クロスボウは矢を番えてレバーを引くことで発射するタイプの武器である。こいつは狙いをつけてレバーを引くと真っすぐ飛んでいくので他の遠距離武器に比べればあて安い。他は真っすぐ飛ばすことも困難だからな。アーチェリーに使われるロングボウは矢を番えてギリギリと弦を引っ張り離すことで射出する。明後日の方向に飛んでいくだろうし、力加減によって飛距離も変わるからまともに扱える気がしないぜ。

「ま、(老師を)見てるだけでいいんじゃね」

「それしかないのがもどかしい」

 グルゲルが軽い調子で言うが、こちらは気が気じゃない。

 一方の空中のマーモであるが、クルクルとその場で回転を始めていた。

 彼の回転に合わせ蛍光灯の光も回り……え?

「光が伸びていってないか? それにマーモが自由落下してこない」

 回転の勢いで自由落下しないとか物理的にあり得ないのだが、現にマーモは空中にとどまったまま落ちてこないのだ。

 高速回転しているため、茶色い塊から光が伸びているように見える。その光がじわじわと伸びていっているんだよ!

 あっという間に光の長さが5メートルほどになり、マーモが落下し始めた。

 ぶおんぶおんぶおん。

『グギャアアアアア』

 青の王の絶叫が響き、余りの音量に尻もちをつきそうになった。

 光がオーラごと青の王を切り裂いていき、頭蓋から胴体、そして尻尾まで真っ二つに!

 ズウウウウンと倒れた青の王が光の粒となって消えていく。

≪討伐報酬 

 世界の書 その15 解放

 1000000ガルド

 神酒

 神域コッズ鉱石≫

 なんかすごそうな報酬が出た。それよりなにより、世界の書がその15ってのがやべえ……。

 それはともかく!

「な、なんじゃあれえ」

「ありゃ、真似できねえな」

 マーモの回転攻撃にあっけにとられる俺と感心した様子のグルゲル。

『リンゴと梨を寄越すモ』

「はいはい」

 大活躍だったので、おまけでブドウもマーモに与える。

 しゃりしゃりとリンゴをかじるマーモを見つめていると、グルゲルがピクニックに行くかのように発言した。 

「次行くか」

「次って……ボスを倒したじゃないか」

「あー、いくつか部屋があるって言っただろ」

「まさか、ここ、各部屋にボスがいたりする?」

 グルゲルがにかっとして親指を立てる。

 ……そいつは想定外だぞ。

「グルゲル、777階はエクストラステージなんじゃないか?」

「エクストラ?」

「グルゲルはゲームをやったことがないから想像つかないよな……まずは山田さんのところに戻ってから」

「分かった」

 山田さんもあまりゲームをしていないって言ってたから合点がいかないかもしれない。

 ゲーマーの吉田君なら恐らく俺と意見が一致すると思うんだ。

 壁を破壊するという隠し要素を使い、かつ普通に降りることが困難な750メートルもの竪穴を抜け、辿り着くことができる777階。

 ショートカットだと思っていたが、ボスが何体もいる階層なんて普通じゃないだろ。

 出てきたモンスターもマーモだから倒すことができたが、他と隔絶する強さを誇るボスモンスターが数体いるんじゃなかろうか。

 そこから導き出される答えは、本来のボスより強いボスが配置されている裏ステージなんだったんだよね。

 グルゲルにはどう説明すりゃいいものか。

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