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第8話 スキル

 一階から地上へ出る階段があったが、壁が塞がっていて外に出ることはできなかった。出ることができるかどうかだけは確かめておきたかったので、1階のマップも埋まったところで帰還した。シャワーを浴びて素っ裸でキンキンに冷えた真っ黒な炭酸水を飲む。

「ふう。生き返る」

 真っ黒な炭酸水は10ガルドで購入したものだ。だいたい、1ガルドで10円くらいの計算になるのかな。

 一階の探索で3000ガルドくらい手に入れたので、日給3万の計算になる。悪くないじゃないか。一階を毎日探索しているだけでも生活していくに支障はなさそうだ。

 もっとも、生活していくことができるものの、ゲームをクリアすることはできないのだけどね……。

 誰かがクリアすると俺もこの世界から日本に戻ることができる可能性はあるが、絶対じゃあないもんなあ。ある日気が付いたら俺以外みんないなくなっていた……という事態もありうる。俺だけ夜中スタートで探索している状況だから他のクラスメイトがどうなってんのか分からんままになるだろうから。仕方ないじゃないか、誰かときゃっきゃしながら探検するとか無理だもの。必要に迫られない限りはご遠慮したい。

 イルカがソロじゃ無理です、と言っていたらパーティでの攻略も考えたけど、今のところはソロで進めるつもりだよ。

「腹減った……」

 ディスプレイにあるお食事メニューを出してみると、品ぞろえの良さにビックリした。

 スーパーで手に入る生鮮食品をはじめとして、カップラーメンやパックのご飯、お弁当類からおむすびまで揃っている。

 レストラン的なメニューも、レシピサイトに載っているようなものまであった。

 自炊をするとしたら、調理器具を注文しなきゃならないからハードルが高い。果物くらいなら注文してもいいかもしれない。

 そんな俺が選んだ一品は――。

「牛丼だよね、やっぱ」

 奮発して特盛にしたぞ。紅ショウガとトウガラシをマシマシにして、いざ実食。

「うめえ。動き回ったから余計にうめえ」

 真っ黒な炭酸水との相性も抜群だ。いやあ、このために生きていると錯覚するほどだぜ。

 食べ終わる頃、太陽が顔を出し眩しさに目を細める。

 疲れもあり、満腹になったことで急速に眠気が強くなってきた。

「先に寝るか……」

 その前に一つだけ確認しておきたい。

 それはだな、部屋の隅にあるゴミ箱である。ランドリーボックスみたいな見た目で、大きさは50リットル用のゴミ箱くらいでなかなかのサイズだ。

 これから食事をするたびにゴミが増えていくだろ。ゴミの回収日の説明はないが、ゴミ箱には大きく「ゴミ箱です」と書かれている。

 試しに、牛丼が入っていた容器をゴミ箱に入れてみた。

『おいしい』

「うお」

 一瞬で牛丼の容器が消えたぞ!

 物理的に消滅するなんて、なんで? という疑問はもはや浮かばない。ゲーム的な考え方だったら、捨てたら消えるものだからね。

 んじゃま、持ち帰ることができそうだった宝箱産のアイテムを突っ込んでおくか。

『おいしい』

『こんないいものを』

『お塩もほしいな』

 セリフが多彩なゴミ箱である。

 宝箱産のアイテムだったら多少のガルダは入るかもと期待したのだけど、結果はゼロだった。次回からは持ち帰ることを止めておこう。

 すっぱり諦めることができるからある意味悪くない仕様だな、うん。

 

 ◇◇◇

 

「ふあああ」

 よく寝た。時刻は夜の21時半。えらく長い睡眠時間になったが、気にしてはいけない。

 腹が減り過ぎていたので、パン系の朝食メニューを頼んで飲み物は野菜ジュースにした。

 食べ終わった後は紅茶を飲みながら、イルカにゲーム仕様を尋ねる。

「……となります」

「ふむふむ」

 プレイヤーの成長要素はレベルとスキルがあるのだって。

 レベルはモンスターを倒すことによって上がっていくオーソドックスなものだ。レベルの上昇によって体力や筋力が上がっていく。

 ゲーム的な数値が上昇するだけなのか、数値だけじゃなく物理的に俺の肉体も強靭になっていくのかは不明。レベルを上げれば分かるはず。

 もう一方のスキルはレベルとは別の技能的なものになる。

 たとえば、鍵開けや罠解除のスキルを持っていれば罠のかかった宝箱を開けることができるようになったりといった感じだ。

 スキルはアイテムを使うことで簡単に習得できるが、熟練度という要素がある。罠解除を例にすると、より深い階層に設置されている宝箱にはより高い熟練度が要求されるといった感じだ。

 

 スキルを習得するために注意点が二つある。一つは習得のためにアイテムが必要なこと。もう一つは非戦闘エリアであることだ。非戦闘エリアとはダンジョンの中だと聖域で、ダンジョンの外なら洋館の中になる。

 この辺りはイルカ情報がないと気がつけなかった……ってほどでもないか。

 というのは、だ。

 おもむろにパールを握りしめ、ブンブンと振り回す。

≪鈍器スキルを習得しました≫

 とまあこんな具合にスキルを習得できる。自室の中で試しに武器を振ってみるくらいなら気がつくはず。

 しかし、スキル習得アイテムとなると話が異なる。パールのような武器ならば分かりやすいが、簡単に入手できるのもののこんなの分かるかよ! ってアイテムが多い。


 一例をお見せしようではないか。ディスプレイの前に立ち、該当するアイテムを検索してみる。うん、あった。

≪知恵の輪を購入しました。≫

 もう一つはこいつだ。

≪地下足袋を購入しました。≫

 工事現場とかで履くアレである。世界観台無しだと思うのだがよいのかこれ? 地下足袋の代わりにボロボロのローブでも良いらしい。

 さっそく試してみることにしよう。

「案外難しいな、これ」

 知恵の輪をこねくり回し、ようやく解けた。

≪罠解除のスキルを習得しました≫

 よし、次。

 地下足袋を装着して歩く。

≪忍び足のスキルを習得しました≫

 罠解除は名前の通りのスキルで鍵開けの技能も兼ねる。もう一方の忍び足はモンスターに気がつかれ難くなる技能だ。

 忍び足は歩くだけで熟練度が上がっていくらしく、お手軽かなと思って。

 スキルは初期4つまでで、10レベルごとに1増える。今の俺はレベル1なのでスキルは4つまでだな。

 もう一個は何にしようかなあ。盾、軽業士、アイテム鑑定辺りに目をつけている。

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