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第71話 金色のあいつ

 143階の作りは100階と似ている。階段のところに細い横道があり、仕切りのない広すぎるフロアに繋がっていた。

 横道に入らず進むと、ドクロのトラップがあって、トラップを発動させると落とし穴となる。試していないけど、そのまま進んだらきっと榊君が引っかかった固まるトラップがあるはず。

 んで、横道から入ってフロアに抜け、グルゲルに構造を調べてもらっている。

「100階と同じだな。階段を出たところに床のトラップ。そんで、モンスターが一体だけいるな」

「モンスターのところまで行こう。どんなモンスターからここからでも分かる?」

「んー、硬そうな感jいがする、くらいだな、見りゃ分かるだろ」

「う、うん」

 ざっくり過ぎて何の参考にもならねえ。

 彼女の言う通り、見りゃ分かる。マーモとグルゲルがいれば火力は必要十分だ。俺は回避に集中すればいい。当たらなければどうということはないのである。

「カラス、モンスターのいる方向がここからでも分かる?」

「くああ」

 カラスがよちよちと歩き始める。お、敵感知もできるのかとお願いしてみたら迷うことなくカラスが進んでいるではないか。

 少なくとも目に見える範囲にはモンスターがいないから、この距離から分かるなら大万歳だよ。

 表示名が「器用なカラス」だし、表示名から感知系も備えているって分からないところが嫌らしい。俺にはイルカがいるからある程度、魔獣がどのようなことができるのか聞くことができるけど、他の真理を引いたクラスメイトだとどんな能力を持っているのか全く持って分からないよな。

 カラスがマイペースにのろのろ進み、後ろから俺たちがついていく。

 動きが遅いのでマーモにも運動がてら歩いてもらうことにした。マーモは後ろ脚で立ったままでも進むことはできるのだが、前脚も使って歩いた方が楽な様子。

 体の動かし方を見ても、四つ足で進んだ方がスムーズに見える。

 お、モンスターの姿が見えてきたぞ。

 なんだか神々しい……いや、ゴージャスなモンスターだなあ。全身金ぴかで丸っこいデフォルメされた動物の頭のよう。

 ぶさ可愛いキャラクター? 馬かパンダかその辺の顔つきをしている。

≪ゴールデンでびる≫

 表示名もなんだか変だ。表示色は紫色だった。ツインヘッドドラゴンの時は赤色だったので、奴と戦った時よりはレベル差が少ない。

「なんだあいつ?」

「グルゲルも知らないのか?」

 グルゲルに聞くと、左右に首を振り、眉間に皺が寄る。

「見たことねえなあ。首がねえから、陽動だけするぜ」

「助かる。マーモ、行けるか?」

『任せるモ。ちゃんとリンゴも寄越すモ』

 いつのながらブレない。彼には恐怖なんてなく、とにかく果物が食べられるならそれでよいのだ。

「食べ物は後からな」

「んじゃ、寄ってみるか」

 先陣を切ったグルゲルが首を回しながらスタスタとモンスターへ接近して行く。

 彼我の距離が10メートル辺りになったところで、丸っこいゴールデンの全身がハリネズミのようにぶっといトゲが出てきて、一部のトゲがグルゲルに向けて飛んでくる。

 対する彼は体を揺らすだけでそれらを回避した。この間も歩みは止めていない。さすがのグルゲルである。

 マーモを投げたらトゲに刺さりそうで、怖い。

 どうしたもんか。悩んでいると、小脇に抱えられたマーモがいつものごとく要求してくる。

『投げるモ』

「いや、あのトゲやばくね?」

『斬ればいいモ』

「わ、分かった」

 本当に大丈夫だろうな。意を決し、マーモを投擲する。

 そいやああああ。

 宙を飛ぶマーモに向けてトゲが飛んでくるが、ぶおんぶおんで斬りさき、そのままゴールデンでびるの頭上へ落下する。

 ぶおんぶおん。

 蛍光灯の光が奔り、ゴールデンでびるがバラバラになって光の粒となって消える。

「ものすげえな……マーモ」

 唖然となり口が開きっぱなしになってしまったよ。

 

≪討伐報酬 

 世界の書 その2 解放

 100000ガルド

 ゴールドメタル≫ 

 ぬお、討伐報酬に加え、レベルがえらい勢いで上がってるじゃないか!

 ようやくレベルアップが止まった。なんと15レベルも一気にあがったのだ。

「レベルが225まであがったよ」

「ん、あー、確か255が最大だったか?」

「うん、レベルカンストも見えてきたけど、ディープダンジョンの最下層まではまだまだ遠い気がする」

「あー、それなー」

 グルゲルの歯切れが悪い。なんだろう、何か気になることがるんだろうか?

「何か気が付いたことがあるの?」

「さっき麓のこと聞いただろ。んで、何か思わなかったか?」

「……モンスターがまだまだ弱い、ってこと?」

「んだ。四人もいるんだぜ。戦闘が得意じゃねえ俺がソロで悠々と進むことができる階層だろ」

 ディープダンジョンは下へ行けば行くほどモンスターが強くなる。

 降臨組は全部で四人だ。彼らが協力することもなく鼻歌混じりに進むことができるモンスターしか今のところ出現していないとなれば、まだまだ序盤……いいとこ中盤にさしかかったところって感じじゃないか、とグルゲルが推測している。

 一方で、イルカは「誰でもクリアできる」と言っていた。何度も聞いたから聞き間違えはない。

 今のところイルカ情報で間違った情報がないことから、降臨組ならソロで余裕なレベルであってもクリア間近って線も……いや、ないな。

 「誰でも」クリアできるが、「どれだけ時間がかかるか」は提示されていないのだ。以前、イルカにこのままじゃとんでもなく時間がかかるようなことを聞いたような……。レベルマックス、最適なスキル構成、最良の武器防具を揃えたうえで幸運も伴いソロクリア可能な条件かもしれないんだよ。

 ディープダンジョンは基本的に嫌らしい仕様だ。

 都合の良い解釈をしてしまうと足元をすくわれる。最悪を考え尚、斜め上くらいに考えておかなきゃ。

「あー、グルゲル」

「ん?」

「エレベーターもあったりする?」

「あるぜ」

 ほら、中途半端な階層にボスがいて、エレベーターまである。しかも休憩所から近い階層で……。これがディープダンジョンなんだよ。



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