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第70話 麓

 体力全快、グルゲルもいることだし快調にダンジョンを進んでいる。

 状況が変わったのは132階だった。ある種のトラップなのかな、これ……。

 132階は100階と同じように仕切りのまったくない向こう側が見えないほど広い構造になっていた。

「グルゲル、階段にも罠はなかったよな」

「んだな、見える範囲だが床にも罠はねえな」

「んー、となったら『たまたま』仕切り無し構造になった線が有力か」

「毎日構造が変わるんだ。こんなこともあるだろ」

 仕切りのない構造はローグライクゲームだと定番の「モンスターハウス」ってやつだ。

 ディープダンジョンは毎日ダンジョンの作りが変わるローグライク型なので、モンスターハウスな階層があってもおかしくない。

「つってもディープダンジョンのモンスターハウスは余り脅威にはならないな」

「モンスターが密集しているわけでも、集まってくるわけでもねえからな」

 そうなのだ。

 ディープダンジョンのモンスターは一定距離まで近寄らないと起動しない。加えて、ほぼ二体と決まっている。稀に一体のこともあるけど、減る分にはこちらが楽になるだけ。

 どちらかというと、これ、ボーナスタイムじゃね?

「グルゲル、各個撃破したい。探す手間も省けるし、ここでレベル上げだあ」

「好きだな、それ」

 やれやれと右手を前にやり手首をぐるぐる回すグルゲル。彼女がいれば索敵も抜群、そして殲滅速度も爆上がりだぜ。

 バッタバッタと次から次へとモンスターを仕留め(グルゲルとマーモが)、レベルも二つあがった。

「ありがとう、グルゲル」

「まあ、暇つぶしにはちょうどいい」

「そういや、降臨……ええとグルゲルやウプサラはレベル255でもう上がらないんだっけ?」

「ルイがレベルとか言ってたな。よくわからんが、戦えば戦うほど経験を積めるってのは分かるが、それで戦闘能力が上がるかどうかはそいつ次第だろ。修行の方が力がつく奴もいる」

 なんだか話がややこしくなりそうだ。グルゲルはゲームの仕様? のレベリングが適用されているわけじゃあなさそうだ。

 適用されているのかもしれんが、グルゲルが元々持っていた力を数値化しているに過ぎないのだと思う。

「んーと、グルゲルがモンスターとバトルをして今より強くなれそう?」

「相手によるんじゃねえかな。ある程度以上の相手じゃねえと、戦闘勘も研げないからな」

「まだ(モンスターは)ある程度に至ってない?」

「んだな。いまんところ、ツインヘッドが一番マシだが、ふもとの奴だからなあ」 

 聞いても無いのだが、「麓」とやらについてグルゲルが聞かせてくれた。話を聞きながらも歩みは止めておらず、133階へ向かう階段を進んでいる。

 グルゲルの世界には人類未踏の地と呼ばれるところが沢山あるそうだ。その中でも危険度が高い秘境と呼ばれる地域の一つに「魔境」がある。

 魔境は他の地域に比べ遥かに強力なモンスターが闊歩しているのだが、その中でも強さの差が激しいんだと。

 んで、平地にいるのが平均レベルが最も低く、高地、深い渓谷とかに生息している者ほど平均レベルが高い。

 本題前の話が長く、正直もう聞きたくないのだが、イルカと違って生身の人間が説明してくれているので聞くだけは聞かねば。

 ええと、そんでだな、魔境エリアの中に高い高い山があるんだって。

 その麓に住んでいるのがツインヘッドドラゴンである。えらい端折っただろって? ま、まあそうだ。

「山? の麓でも平地の平均よりレベルは高いんだよな?」

「んだな、まあ、山とか渓谷ってのは力場みたいなものがあるんだろうな。強い奴らが集まる」

「その口ぶり、山に行ったことがあるの?」

「まあな、ちょっとした用があってよ。ああいう場所には秘薬になる植物が自生していたり、特殊な鉱石があったりするんだわ」

 その理屈は理解できる。超協力な場所だからこそ、植物も鉱石も性能が高くなる。そんな場所だから、強いモンスターにとって居心地が良いのだろう。

 山登りしたグルゲルからすりゃ山の麓にいるツインヘッドドラゴンなんて鼻歌混じりに倒すことができるモンスターってこった。

 おっけ、話終わり。

 と思っていたら、グルゲルが更なる爆弾を突っ込んできた。

「そこで、伝説の老師にたまたま出会ったんだぜ」

「え、ええと、老師ってマーモだよな」

『リンゴを寄越すモ』

 歩きながらだってのにリンゴを渡せとはなかなかな要求だな。

 といってもマーモは動いていない。俺が脇に抱えているからね。果汁でべたべたするのは嫌だったが、グルゲルに断ってから、リンゴを取り出し、マーモに与える。

 さっそくしゃりしゃりと食べだしたので再び小脇に抱え、歩き始めた。

 そろそろ階段も終わりに近づいてきたので、お喋りもこの辺までかな。

「ミレイも、おやつにしようかなあ」

「ほいほい」

 ミレイが自分で俺のリュックの横ポケットを開け、ミレイ用に小分けにした甘ーいのを出す。そして、俺の肩にちょこんと座る。

 二人のおやつタイムに気を取られていたが、さっきグルゲルがとんでもないことを言ってなかったか?

「グルゲル、マーモが超危険な山に住んでいたの?」

「んだぜ。なんであんな所に住んでたのかは知らねえけどな、カカカ」

 笑いごとなのかそれ?

 ま、まあ、きっと、果物がいっぱい自生していたんだよ! 秘薬とかも生えているみたいだし、果物も沢山種類があって肥料なんて必要なく爆速で育ったりしたんだ。

 ……意地でも住み着きそう。

 

 ◇◇◇

 

 141階には120階と同じ休憩室があった。微妙に階数が中途半端で嫌らしい。ほんと油断できないな、ディープダンジョンってやつは。

 まだ疲労感もそれほどなく、宿泊するには早すぎたので少し先の階も見ておこうと更に進むことに。

 そして、143階へ向かう階段で事件は起こる。

「罠があるぜ」

「え、ええ。油断ならなさすぎだろ」

「100階の時と同じぽいな。そこが脇道、進んでそこが落とし穴だ。クアーロも気が付いているぜ」

「くああ」

 罠があり、カラスが罠を発見できたことは僥倖ぎょうこう、僥倖。しっかし、こんな中途半端な階で罠があるとなると、罠感知無しで進むのは危険過ぎるぜ。

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