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第68話 グルゲルの戦闘方法

「いやあ、グルゲルがいると即終わるなあ」

「オレじゃねえ、老師がいるからだろ」

「マーモも一撃で仕留めてくれたけど……ん、なんかモンスターの出現って二体の時が多くない?」

「オレの観察した限りだが、一体が2割、二体が7割、三体以上が1割だな。んで、90階以上になると、三体以上をまだ見ていない」

 すげえ、そんな細かいところまでちゃんと見ていたとは驚きだ。俺はグルゲルのようにちゃんと記憶しているわけじゃないが、なんとなく二体が多いなと思っていた程度だった。彼女によって経験が補足され戦略が立てやすくなったぞ。

 感知無効のモンスターが今後出てくるかもしれないから絶対とは言えないが、奇襲を受けることはまずない。敵の数は二体に対応できるようにすればいいとなると……って今まで考えた作戦と変わらんな。は、はは。取れる戦略が少ないから考えるまでも無かったぜ。

 一体をマーモに攻撃してもらって、残り一体に対し俺はひたすら回避しつつ隙があればバールで殴る。これだけ。

 ん、さっきのグルゲルの言葉でこれとは別に気になることがある。

「グルゲルも俺が見た限り、全てのモンスターを一撃で仕留めているよね」

「いや、『首を落とせる』相手だけだぜ。オマエにどっちを受け持つか言ってるだろ」

「首を落とせば、モンスターは一発で倒せるんだよね」

「相手によるぜ。首がない奴もいるからな」

 言われてみれば、グルゲルはモンスターの首を落として仕留めていたな。生物的に首を落とされて無事なものがいるというのが恐ろしいが、一撃で仕留めるという観点では一番理に叶っている。グルゲルは首があり、首を落とせば倒せるモンスター限定で一撃とのこと。

「首のないのって、あ、ああ、スライムとか、アンデッドで首のない騎士とか、そんなのか」

「んだ。首が落ちても再生する奴とかもダメだな」

「再生するのだと、マーモでも無理そうだよ」

「んなことはねえ。再生するってもコアがあるんだぜ。コアを斬れば落ちる」

「マーモの場合は何でもバラバラにするからな……」

「コアを破壊しなきゃ落ちねえ相手にはそうしているぜ。さすがの老師だ」

 コアってのが何なのか分からんが、たとえば不定形のスライムみたいなモンスターの核となる部分と考えればいいのか。

 核を破壊しない限り、切っても切っても再生する、と理解した。

 マーモってグルゲルからも一目置かれるほどの猛者だったんだなあ。

 ブドウをがりがりしている姿からはたたのお間抜けさんなのだが。ええと、確かカードの説明によると――。

 ≪マーモット界伝説の武芸者。真実はキミの目で確かめてくれ≫

 って書いてたな。

「だいたい理解したよ。グルゲルとマーモで接敵即殺で進めるってね」

「そんな戦闘は得意じゃあねえんだけどな。まあ、いまんところ出てきたモンスター程度なら行けるぜ」

 頼もしい言葉をいただき、ガンガン進むぜーと右手を振り上げる。

 俺らしくなく、恥ずかしくなってきた。

 

 ◇◇◇

 

 特にフロアの罠がなく、105階まで到達する。

 途中発見した宝箱をカラスのクアーロに頼んで開けてもらったりして、進んできた。

 事前情報で聞いてはいたが、1階層辺りの広さが倍増している。階段を発見したら即降りるようにしているものの、100階までに比べると進むしんどさが段違いだ。

「確か105階にはエレベーターがなかったんだったよな」

「そうだったか? アグニの奴が進んだんだったか」

「多分……何階まで進んだのか、正確なところは分かってないけど……」

「構造を読むとすっか。広いから時間がかかるぞ」

 グルゲルがどかりとその場であぐらをかき目をつぶる。

 その間にマーモとミレイにお食事補給を行い、カラスにも何か食べるか問いかけてみた。

「くああ」

「う、ううん。おにぎりなら食べる?」

「くあ!」

 食べるらしいので、カラスにはおにぎりを与える。ガッツガッツとクチバシで激しくつついて食べていた。

 待つこと10分ほど、ぱちりと目を開いたグルゲルが「んんんー」と伸びをする。声は可愛らしいのだが、仕草とセリフがどこのおっさんだよ、と突っ込みたくなるわ。中身が違うとわかっていても、見た目は清楚、おっとり系の美少女なわけで……。脳がバグる。

「分かったぜ。しっかし、こいつは何度もできねえ」

「おお、クソ広いのに分かるってすんごいな」

「だから何度もできねえ。オマエのことだ、エレベーターが分かるなら階段も分かるだろって考えると思ってな」

「そっか、階段を探れば楽に次の階へ行くことができるな」

 はああと大きなため息をつかれてしまった。

「だからできねえって言ってんだろ」

「何度も、できないんだよね?」

「何度もできねえし、エレベーターと罠以外のもんは構造の感知じゃ探れねえ」

「モンスターも探れそうだけど、あんま意味はないか」

 あ、と言った顔になり「モンスターも探ることはできんことはない」とぼそりと言うグルゲルである。

「なんでエレベーターと罠、一応モンスター、だけなのかって詳しくは聞きたくねえだろ? んで、105階にエレベーターはねえ。次は110階で探ってみる」

「うん、仕組みを聞いても役立てることはできないから……やっぱりエレベーターはないのね」

 100階以降は10階層ごとにエレベーターの出入り口が設置されていると安易に考えるのは危険だ。

 ひょっとしたら109階にあるかもしれないし、120階まで無いかもしれない。

「ま、進むしかないわな」

「ディープダンジョンは悪意に満ちているけど、仕様上、一日で探索できる範囲にエレベーターがあると思うんだよなあ」

「その気になりゃ、何日もキャンプできる食料やらは手に入るだろ?」

「あー、階段で休めばモンスターもでないから、安全に寝ることもできるか」

 すんごく嫌な予感がしてきたけど、110階にエレベーターがあることを信じて無心に進むことにした。

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