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第6話 宝箱うめえ

「とりゃあああ」

 武器なんぞ持っていない俺は勇敢にもペーパーゴーレムに殴りかかった。対する奴は俺の攻撃を避けようともせず緩慢な動きで前に出る。

 見事奴のどてっぱらに俺の拳が突き刺さ……。

「痛てえええ!」

 ボール紙かと思いきや、骨が折れるかと思ったぞ。ならば次の手を繰り出すしかない。

「さらば! とっつああん!」

 ペーパーゴーレムの脇を華麗に走り抜け、ハードボイルドな感じで指を立て横に振る。

 奴の動きが緩慢であることは先ほど殴りかかったときに分かった。予想通り、俺の動きについてくることができず、あっさり撒くことができたぞ。


「宝箱の位置はどこ?」

「その質問には回答できません」

 イルカの無機質かつ無情な回答に憤ることはない。

 イルカは攻略本じゃなく、所詮ゲームのヘルプ機能だって分かったからさ。贅沢を言っちゃあいけねえ。

 あの後、ペーパーゴーレムに二度ほど遭遇したが逃げの一手で1階の探索を進めている。

 動きながらも気になったことをイルカに質問しているのだが、有効な回答は少ない。

「ダンジョンの構造は?」

「ローグライクです」

「ローグライクとはなんだろう」

「毎日ダンジョンの構造が変わります」

「え、えええ。エレベーターの位置とかも?」

「変わりません」

 安全な聖域の位置は変わらず、その他のダンジョンの構造が毎日ランダムに入れ替わるそうだ。

 その際に毎回、宝箱もモンスターも生まれ出るとのこと。こういった毎回ランダムでダンジョンの構造が変わる形式のゲームをローグライク系と呼ぶんだってさ。

 プレイヤーにとっては分からんが俺にとってはローグライクの方がありがたい。なにせ宝箱が毎日復活するわけだからね。

 イルカから得た事前情報によりダンジョンにはモンスター、トラップ、宝箱があることが分かっている。初心者ボーナスなのか、10階まではトラップもないし、宝箱には鍵もかかってなければ罠もかかっていない。

 つまり、宝箱を開けたい放題ってわけさあ。

 このままじゃペーパーゴーレムを倒してガルドを手に入れることができない。なら、宝箱からガルドを得るか武器なりのアイテムを手に入れなきゃならん。

 宝箱に何が入っているのかはイルカが教えてくれなかったので、開けてみてのお楽しみだけどね。宝箱型のモンスターだったら目も当てられない結果になる……が、10階まではトラップがないので宝箱型のトラップもないはずだ。

 

 更に歩きまわること20分ほど。ペーパーゴーレムに二度ほどエンカウントした。

 1階にはペーパーゴーレムしかいないのかな? 今のところペーパーゴーレム以外のモンスターに出会っていない。

 そして、ついに長方形のつづらを発見した!

 大きさは一抱えほどで、アンティーク調の金属製の箱で錆びが浮いている。

 ギギギギギ。

 さっそくパカンと開けてみた。

『100ガルドを入手しました』

 視界にメッセージが浮かぶ。中には何も入ってなかったが、ガルドの欄が0から100に増えている。

 これでお食事ができるな、うん。

 まだまだ探すぞ。1階の隅から隅までな!

『ウッドシールドを入手しました』

『50ガルドを入手しました』

『バールを入手しました』

『木刀を入手しました』

『ぼろぼろのローブを手に入れました』

 通貨がシステム側の数字が増えるだけだったから、アイテムもアイテムボックス的なものに収納されて、いつでも取り出せたりするのかと思いきや、全て物理のままだった。

 通学用のリュックはディープダンジョンの世界に来た時に消えちゃったしなあ。

「イルカ、アイテムを売ることはできるの?」

「ゴミ箱へどうぞ」

 売れないらしい。捨てていくのも勇気だな。1階をまだ踏破していない状況だし。

 よっし、ここは思い切ってバール以外のアイテムは置いていくことにしよう。

 バールは40センチくらいの長さで細い鉄の棒だし、持ちやすく振り回しやすい。持ち運び用に吊れるものを腰につければ動きも阻害しないようにできそうだ。

 

 バールという武器を手に入れた俺はペーパーゴーレムに挑戦してみることにした。

「う、動きは遅いが、怖いは怖いな」

 試しにどれくらいの攻撃力を持つのかウッドシールドをペーパーゴーレムに向けて放り投げる。

 バキキイイイ!

 ノロノロと振り抜いた拳部分……ではなく肘あたりとウッドシールドがぶつかったのだが、ウッドシールドが真っ二つに割れた。

 無理、無理ですよ、あれ。

 ウッドシールドという名前からして木製なのだが、木を真っ二つに割るってなかなかできることじゃないぞ。空手のデモンストレーションとかで板を割ってたりしたから、人間でもできないことはないのか。

「当たらなければどうということはない」

 動きの遅さと的の大きさから、振ればまず当たる。当ててみてどうにもならなければ逃げればいいだけだ。

 自分でも驚くほどのぺっぴり腰でバールを振り抜く。

 ベコン。

 ペーパーゴーレムに当たってバールが跳ね返るも、少しだけ当たった部分がへこんでいた。手にジンジンくることもないが、この様子だとちょっとやそっとじゃペーパーゴーレムを倒しきることはできなさそうだな。

 待てよ、ディープダンジョンはゲーム的な世界だ。空間といってもいいのかも。

 ゲームと異なるのは生身の人間がプレイヤーということ。ゲームに似せて何者かが作った仮想空間的な何かであることも否定できない。

 要は何がいいたいのかというと、生身の俺の筋力とか木製だからとか紙だからという「常識」は「常識」じゃあなくなるのではないかってことだ。

 ペーパーゴーレムは防御力みたいな数値が設定されていて、バールにも同じく攻撃力みたいな数値が設定されている。

 後で調べようと思っているのだけど、俺自身にも攻撃力を加算するパラメーターや能力があるはず。

 ゲームをはじめたばかりで、イルカは能力値の補正は何も無いので、ペーパーゴーレムに対してもベコン程度しかダメージが通らない、んじゃあないかってね。

「宝箱を開けれるだけ開けて、部屋に戻るか」

 実際にプレイしてみると調べなきゃいけないことも分かってくる。事前に調べれるだけ調べて行くってのは中々に難しいんだよな。

 俺の場合は情報量が多すぎ、重要度も分かってない状態だと結局頭に入らないからね……。

 

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― 新着の感想 ―
ガルドの説明なんて今まで一切なかったろ 山田は何でダンジョン潜る前に自販機でおにぎりと飲み物買えてたんだ? 主人公はガルドの使い道をイルカに聞く描写なんてありました?
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