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第44話 見える、見えるぞ

 見える、見えるぞ。モンスターの動きが。

 ミレイに強化してもらった状態だと、95階のモンスターであってもモンスターの動きが見える。

 見えるだけじゃなく、見えてから動いても回避することが可能だ。

 ただし、まだ慣れないため、回避するなら回避に集中していないと危うい。回避して攻撃する、となると結構な経験を積まないと難しそうだと分かった。

 理想は二体以上のモンスターが開いての場合は俺とマーモがともにモンスターを叩いて潰す、なのだが、それで大怪我をしたら元も子もない。

 幸い、100階に至るまではグルゲルという猛者がいる。

 彼にモンスターを一体任せつつ、俺は回避に専念。一度回避したら、マーモに頼る作戦で行くことにした。

 回避の練習をしつつ要する時間も最小限になるようにってね。

 

 無心で回避を繰り返していたら、いつの間にか99階に到達していた。

 100階を目前にしてモンスターもじわじわと強くなってきている。それでも、グルゲルは首を跳ね飛ばして一撃で仕留めるし、マーモはマーモでぶおんぶん、敵はバラバラになった、な状態である。

 こいつらの底はまだまだ見えんな。そのうち一撃で仕留めれないモンスターも出てくるだろ。

「99階でも回避可能。よし」

「盛り上がっているところすまねえが、今回の構造は階段が近いようだぜ」

 ピッと右手の小部屋へ入る隙間を指さしたグルゲルが、にいいっと笑みを浮かべる。

 えええ、いま99階に入ったばっかりだってのにもう100階へ?

 も、もう少しレベルを上げてから行きたいところなのだが、時刻は既に朝の8時。100階の探索も考慮すると100階へ向かった方がいいか。

 確認したいこともあるから、時間に余裕を持って挑みたい。

「グルゲル、すぐに100階に向かいたいんだけど」

「おお、そうこなくっちゃな。またちまちま『慣れる』とか言い出すのかと思ったぜ」

「は、はは。100階には榊君……ウプサラがいるんだったよな?」

「そうらしいぜ」

 ふむ、ここまでは聞いていたことを繰り返しただけだ。ここからが本題である。

「ウプサラが動けなくなったのってなんでか分かったりする?」

「いんや」

「俺が考える可能性としては二つあるんだ。一つは階段を登ったところでなんらかのトラップが発動した。もう一つは出待ちしていたモンスターの状態異常をくらった」

「罠か。ここまで無かったのも100階で油断させるため、か。面白れえ。いい感じで嫌らしいじゃねえか」

 ケラケラと笑うグルゲルだが、こっちは気が気じゃないんだぞ。

 グルゲルが何も知らないのは想定通り。自分の考えを述べたところで続くは「お願い」だ。

「ディープダンジョンは最初からずっと嫌らしいって。一見してヌルゲーに見える人もいるのがまた嫌らしい」

「そんなもんか」

 ほんんんっとうに嫌らしいって! って叫びたくなる。

 降臨を引いてヌルゲーだと思わせておいて、引く英雄によっては人格に影響がでるデメリット有り、とか、初期階が50階とか、あげればきりがねえ。

 そのくせイルカは誰でもクリアできるとか言うし。

 降臨も神器も強力だが、ディープダンジョンの仕様を把握しているのなら、むしろ真理が一番やりやすいかもしれないと思い始めている。

 仕様を把握しているのなら、ね。

 立ち話に飽きてきたのか、マーモが俺のズボンを爪で引っ掻けてくる。

『リンゴを寄越すモ』

 目が合ったら果物を要求してくる可愛くないもさもさマーモットが、まさかこれほど強いとか誰も思わんだろ。

 ほんと、ディープダンジョンってやつは。

 そうだ。いっぱい持ってきた果物のうち、こいつを進呈してやろう。

「ほら、これを食らうといい」

 取り出したるはドラゴンフルーツである。ほおら、存分に喰らうといいぞ。粒々がおいしいんだぜ、ドラゴンフルーツは。

『皮を剝いてから寄越すモ』

「えー、ナイフとかは持ってきてない」

「任せな、話ついでにやってやるよ」

 そ、その毒々しい短剣でドラゴンフルーツの皮を剥くの? 結構ドキドキなのだが、グルゲルはなんてことないとスルスルと皮剥きをこなしている。

 ドラゴンフルーツのことは彼女に任せ、俺は話の続きをば。

「俺の予想に過ぎないけど、100階に入った時がやばい」

「さっきの予想か。いいぜ、罠はオレに任せろ」

「お、おお。罠のことを頼もうと思っていたんだ」

「んで、もう一つはどうする? オレは罠で手が空かねえぞ」

 そこは、こいつだ。

 マーモを両手でむんずと掴み、持ち上げる。

「マーモに斬ってもらうのはどうだろうか」

「老師に任せるのか、悪くねえ。ブレスや大抵の魔法ならいけるか」

 さすがに何でもかんでもマーモの蛍光灯でバラバラにできるとは思っていないが、罠じゃなくてモンスターの特殊攻撃だけだと分かったら急ぎ階下へ脱出でなんとかしたい。

「よっし、作戦決定、行くか」

『しゃりしゃりしゃり』

 マーモがドラゴンフルーツをしゃりしゃりしていた。こいつは食べ終わるまで梃子でも動かん。

「……食べてからにしよう、俺も水飲もうっと。グルゲルは?」

「んだな、飲んどく」

 なんて感じで締まらぬ俺たちであった。

 

 ◇◇◇

 

 一段一段、着実に階段を下りていく。階段の終点が100階になるのか、それとも降り切って階段から離れた瞬間が100階になるのか、意識して探ろうにも探れないから慎重に進む以外に道はない。

「今のところ罠はないぜ」

「どこから100階か分からないから面倒だけど頼むよ」

「あいよ、一段一段、探るぜ」

 階段を降り切るまで後二段のところで、グルゲルがピクリと眉をあげる。

「おい、マジかよ。ちっと毛色は違えが、マツイの予想通りだな」

「ん、致命的な罠が?」

「罠……じゃあなく仕掛けと言えばいいか、動かすぜ」

 彼女が壁にペタリと手の平をつけ、少し上、少し左、と手の平の位置をずらす。

 ゴゴゴゴゴゴ

 すると、重たいものが動く重低音が響く。

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