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第43話 T字路突入

 数体倒しただけでレベルが上がり、レッサードラゴンの表示色が青色になった。

 後一体だけ、とグルゲルにお願いしてレッサードラゴンとエンカウントすると、容赦なく攻撃しようとしてきたもんだ。

 忍び足が無効になると聞いていて覚悟はしていたが、実際目の当りにすると「はああ」とため息が出る。

 レッサードラゴンはマーモにぶおんぶおんしてもらってバラバラになり、戦闘はすぐに終了した。

 そういや、俺のバールで攻撃したらどれくらいダメージが入るんだろうか。怖くて近寄ってないため、試せてはいない。

 試すにはちょっと怖すぎるので、今後の課題として心のメモに刻んでおくとしよう。

 これ以上グルゲルを待たせるのはさすがに気が引けるので、95階へと向かうことにした。

 

 ◇◇◇

 

「95階といっても変わり映えはないんだな」

「んだぜ。進んでも進んでも魔物も一階当たり二種だわ、壁の色も天井の色も同じだぜ」

「全く同じ風景、モンスターも同じパターンってのが作業感と虚無感の原因なんだよな」

「広い、構造が毎回変わる、の割に同じときたら、進む気がなくなっちまうだろ」

 あ、そういうことか。

 羊と同じくらいの速度で進むことができるグルゲルが未だ95階までしか到達していないのは「飽きる」から。

 気持ちは分からんでもない。50階到達まで心を無にして進んでいたものなあ。

 羊が手に入る前はもっとひどかった。過去を振り返っても仕方ねえ。95階は俺にとって虚無な空間じゃあない。

 なんせ忍び足無効なんだからな。

「行こうか」

 羊に乗り、マッピングをしつつ進む。

 グルゲルは足音を立てずスルスルとついてきていた。息もあがっておらず汗一つかいちゃあいない。

 どんな化け物体力なんだ、こいつ。体は高山さんのものだってのに、どんな仕組みなんだろうな。

 特殊な走法とかあるのかいな。チラチラと彼女の様子を見ていたらにやああっと嫌らしい笑みで返された。

「お、気が付いたのか。ちゃんと気配を感じ取ってるじゃねえか」

「え、モンスターがいるの」

「そこ、右だ」

「お、おう」

 T字路の右側にモンスターがいるらしい。そんじゃま、羊から降りてミレイにチェンジだ。

「ミレイ、身体能力強化を頼む」

「うんー☆ 全部ー? ぱわー?」

「全部もできるのか、全部で。視力とかも強化できるならお願い」

「おー、いくよおお」

 ミレイがおもちゃのように見えるステッキを振るうと、七色の光が飛び出し俺に当たる。

 

 T字路突入。

 即、体を右手に向け、構える。俺の足元にマーモ、後方にミレイだ。

 敵は二対。右手は直径二メートルほどもある巨大な金貨、左手はミイラだった。

 表示名はそれぞれ「ゴールデンコイン」「マスターマミー」で、表示色は緑である。

「包帯野郎を任せろ、金貨は頼んだぜ」

 言うや否やグルゲルの体がブレ、次の瞬間、マスターマミーの首が跳ねとんだ。

「マーモ、サポートを頼む」

『モ』

「がんばれー☆」

 風が吹けば倒れそうな巨大金貨なんぞ物の数ではないわ。バールで叩けそうな相手に出会ったからには俺自ら攻撃に転じてやる。

 その時、ピカッと巨大金貨が光った。

 同時にマーモが蛍光灯を振るう。

 光線が真っすぐ俺の元へ向かってくるも、蛍光灯によって打ち払われた。

 こ、怖え。

 しかし、このチャンスを生かすぜ。

 マーモを小脇に抱え、ぐぐっと足先に力を込め走り出す。

 は、速っ! いつもの俺の三倍以上の速度で動いたから戸惑うも、しっかりバールを振り上げている。

 マーモを落とし、全力でバールを巨大金貨に叩きつけた。

 べこん。

 えええ、相も変らぬしょっぱい音に変な顔になりそうになるものの、金貨がへこむ。

 続いてマーモの蛍光灯の光で金貨がバラバラに切り裂かれた。

「やるじゃねえか、サクサク行けそうだな」

「正直、かなりドキドキだったよ」

 グルゲルの発言と異なり、もう一発光線が来ないだろうか、ヒヤヒヤものだったよ。万が一の時はマーモが何とかしてくれただろうけど、光線の間隔を見極めてから動いた方がより安全だった。大技の後だからチャンスと飛び込んじゃったんだよね。

「ん、待てよ、このまま羊を出さずに進んでみてもいいか?」

「それなりの速度で進まねえと100階まで行けねえぞ」

「走ってみる」

「あいよ」

 ミレイのバフが効いている間なら、速歩きの感覚で普段のダッシュ程度のスピードが出るんじゃないかって。

 ぴょんぴょんとその場で跳ね、体の様子を確かめる。

 ううっし、すこぶる調子が良い。

「グルゲル、索敵を頼む。発見したら止めてくれ」

 あいあい、とめんどくさそうに頷くグルゲルを横目に走り始めた。

 

 10分ほどジョギング感覚で走っているが、全然疲れない。しかも、羊の進む速度から若干落ちる程度ときたものだ。

 息もあがってないし、ずっと走っていられそう。

 実は俺、もやしっ子じゃあないんだ。毎日30分程度ジョギングする程度の運動しかしていないから、運動部に比べたら大したことはない。

 しかし、何も運動をしていない生徒よりは体力がある。

 それでも今の速度で走ったら10分ももたん。ミレイのバフ様様だよ。走って移動することになるとは考えもしなかった。

 む。次の角を曲がったところ、何かいる。確信はないのだが、「感じる」と言えばいいのか、難しい。

 五感を強化してもらったからかもしれない。

 俺が速度を緩めたことで、またしてもグルゲルがにやあっと笑みを浮かべ顎をくいっとあげる。

「お、今度も気が付いたか」

「やはり、この感覚、『いる』んだな。ミレイのおかげで分かったんだ」

「わーい☆」

 えらいぞお、ミレイ。よおしよおしと指先で彼女の頭をなでなでする。

「組み合わせも分かったりする?」

「金貨が二体だな。片方頼むぜ」

 感覚でモンスターを捉えたことによって、グルゲルの感知能力の凄さがどれほどか少しだけ理解できた。

 そういや、金貨はバールで一撃じゃなかった。となると、この先のモンスターは全て一撃で倒すことができないと思っていた方がいい。

 次マスターマミーが出たらグルゲルに譲ってもらって一撃で仕留めれるか試しておきたい。できれば、倒せない場合は二撃、三撃と打ち込んで倒せるか確認しておきたいんだよなあ。今後モンスターが二体以上出た時、一体はマーモに任せるとして、もう一体をバールで殴り続けるべきか考えておきたいんだよね。

 

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