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第41話 うんー☆

「だいたい把握。お待たせ」

「おう、行くか」

 出発してから気が付く事実。安全エリアで一度ミレイにバフをかけてもらえばよかった。

 まあ、今回はグルゲルという超強いパートナーがいるので、習うより慣れろで行く方がいいか。

 彼女がいるのは今回限りだから、先に試す時間を実践に当てた方がいいだろ。

 などと、自分が抜けていたことが問題ないと理屈をつけていたら、グルゲルから声がかかる。

「いたぜ、そこの角曲がってすぐのところにいる」

「すごい観察力だな。何かコツがあるの?」

「肌で感じろ。外と違って影や音だけ頼りじゃ難しいぜ」

「全部無理だって」

 しれっと言ってのけるが、敵を感知する能力もスカウトのなせる業なんだろうな。

 スカウトというのは罠外しだけじゃなく、冒険を速やかに進める業をいくつも持っている、んだったか。

 モンスターや獲物の気配を探ったり、罠を張ったり、外したり、忍び足で……などなど。

 正直、外を冒険するなら奇襲対策や食料の確保などで一番頼りになる。外ほどではないが、ダンジョン内でもスカウトがいるといないじゃえらい違いだよな。

 ダンジョンではモンスターに一定距離まで近寄らないと襲い掛かってこない。

 曲がり角以外は姿が消えているとかでもなければ奇襲を受けないし、今のところ道中に罠もないから宝箱に触れなきゃ罠もきにしなくてもいいのだ。

 それでも、スカウトは有用だと断言できる。

 俺だってスカウト系のスキルである忍び足でここまで楽に進むことができたもの。

「グルゲル、少しだけ待って欲しい」

「あいよ、急ぐもんでもねえからな」

 彼女に断ってから、イルカに問いかける。

「感知系のスキルってあるのかな?」

「あります。罠感知、気配感知、探索、です」

「色々あるんだな、習得方法とそれぞれ何を感知できるのか教えて欲しい」

「畏まりました」

 罠感知はルービックキューブを六面揃えることで習得でき、効果はまんまだが罠に近寄ると感知するんだと。

 次に気配感知だ。こいつはトランプで一人「神経衰弱」をすることで習得できる。何それ、俺の得意技じゃないか。

 ……ええと、気配感知はモンスターの気配を感じ取ることができる。

 最後の探索は宝箱とかエレベーターが近くにあると、存在する方向が分かるんだってさ。探索の習得方法は地図を描くこと。

 マッピングだったらこれまでにもやっているんだけど、ダンジョンの外でやらないと習得できないという嫌らしい仕様だった。

 その仕様は必要ないだろ!

 どれも使えそうだし、後で三つとも習得しておくか。

「もういいのか?」

「うん、行くぜ」

「おう、頑張れよ」

「え……」

 ポンと肩を叩かれ、にやあっとした顔で見送られる事案発生!

 ま、待たせたのは俺だけど、同行してくれるんじゃなかったのかよ。同行したが一緒に戦うとは言ってねえとか言い返されそうだ。

 本当にピンチになったら助けてくれるよね?

 恨めしく横目で彼女をちらりと見たが、シッシと手で払われた。

 ポジティブに考えよう。いつもと違って見守ってくれている人がいる。見守るにしては邪悪な顔だが気にしてはいけないぞ。

「マーモ、ミレイ、頼むぜ」

『ブドウ寄越せモ』

「うんー☆ マスターを強くするー」

 マーモに蛍光灯を手渡していたら、ミレイがおもちゃのようなステッキを振るう。

 緑の光がぴかーっと出てきて、俺に降り注ぐ。

 これでバフがかかったのだろうか。

 蛍光灯を渡しても動き出そうとしないマーモにブドウを与え、「そこの角」へ向けてゆっくりと歩を進める。

 いざご対面ー。

「うわあ」

『グガアアアアアア』

 角から三十メートルくらいのところに巨体を誇るモンスターがいた。

 ちょうど射程距離に踏み込んだのか、目が合うやものすごい咆哮で威嚇してくる。ビリビリと体全体が震えるほどの音量だ。

 すすすっとマーモが俺の前に立ち蛍光灯を構える。いつもながら男前なマーモットだよ。

 マーモットはとても小さいので、攻撃を喰らったら俺の方に当たる確率が高いとか野暮なことは考えないぜ。

 いつもありがとう、マーモ。

 と心の中で彼に感謝を述べる。

「ミレイは後ろに隠れててね」

「うんー☆」

 残すはふよふよと視界に入ってくるイルカのみだが、イルカはホログラムみたいなものだから気にせずとも良し。

 全て良し。

 なんて余裕をぶっこいている時間はもう幾ばくも無い。しかし、焦る時ほど冷静に行かねばうまくいくものもうまくいかねえんだ。

 小刻みにその場でステップを踏み、体の調子を確かめる。

 なんだか体がふわふわしている気がする。ミレイのバフ効果かな?

 さあどんとこい。がっつりと回避してやるぜ。

 ちなみにモンスターはまだ一歩も動いていない。しかし、俺には分かる。奴は遠距離で攻撃してくることを。

 表示名を見なくても分かるぞ。奴の特徴が。

 直立した恐竜にも似た爬虫類。ワニなんて可愛いものだと思うほどの並ぶ牙、鋭いかぎ爪に長い尻尾。

 察しの良くない俺でも分かったぞ。こいつはドラゴンってやつさあ。

 モンスターの中でも最も有名な一角である。

 念のため表示名の確認だ。対する奴は大きく息を吸い込んでいる。

『レッサードラゴン』

 表示色は青に近い緑だった。ほおら、ドラゴンで合ってる。そして、ドラゴンといえば――。

 ゴオオオオオオ。

 そう口から吐き出される炎のブレスである。

「マーモ、掴むぞ」

『必要ないモ』

 いやいやいや、必要ないって、以前切り裂いたなんだっけ? とは規模が違うだろ。

 ブレスの大きさは俺の身長くらいあるんだぞ。

 マーモを後ろから両手でむんずと掴み、斜め右へ跳躍!

 え、えええ。

 勢いをつけるために軽く飛んだだけだってのに、2メートル近く宙に浮く。

 ブレスは回避できたが、着地、着地あああ。

 勝手に体が回転し、シュタッと着地してしまった。

「す、すげえ。ミレイのバフ」

「えへへー☆」

『一人で回避できるモ? だったら、モを投げるモ』

 気の抜けそうな脱力系ボイスのミレイ。もう一方のマーモはいつものふてぶてしい態度で要求を手短に伝えてきた。

 ほいよおお。投げるぞおお。

 ぶおんぶおん。

 そして、レッサードラゴンはバラバラになり光の粒と化した。 

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