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第36話 職業です

 気になったら即聞いてみる。山田さんがいることなど忘れてしまうのがぼっち標準なのだ。

「イルカ、スカウトって何?」

「職業です」

「え? 仕事ってこと?」

「マスターのレベルに合わせることを失念しておりました。職業はクラスとも読みます。キャラクターに特徴を与える特性みたいなものです」

 一言多いなこいつ。いつものことなので、憎まれ口は気にはならない。

 職業ってのはRPGゲームにあるような「戦士」「魔法使い」みたいなものと想像できた。

 スキルがある仕様だから|職業≪クラス≫なんてものはないと勝手に決めつけていたので目からうろこである。

「んと、たとえば俺が『戦士』とかになれば新しいスキルを覚えたりするの?」

「戦士なら『アーツ』を覚えます。スキルとは別枠になります」

「ほほお、戦士から魔法使いになったら『アーツ』もなくなるの?」

「はい、職業をチェンジすれば、これまで覚えた『アーツ』や『スペル』は消失します。再び『戦士』になっても最初からです」

 職業についてはだいたい把握した。

 スキル、魔獣に加えて第三の強化イベントがあるとは驚きだ。

「俺が職業を変えるにはどうすればいい? 今は職業の表記がないから『なし』なのかな?」

「一つ一つ回答します。マスターの職業は現在『なし』です。続いて、職業を変える――クラスチェンジは神殿で祈ればよいです」

「神殿……どこにあるんだそれ」

「それはキミの目で確かめてくれ」

 出たよ、分からないの言い換え表現。イルカは攻略情報をくれるのでなく、ヘルプ機能だってのがこの回答からでも分かる。

 つんつん。

 いつの間にか隣に座ってマーモを膝の上に乗せた山田さんから二の腕を指先で突っつかれる。

「あ、ごめん」

「ううん、おもしろい話をしているなあって。クラス?」

「ええと、高山さんから英雄グルゲルは英雄じゃなくスカウトだって聞いて、スカウトってなんぞ、とイルカに聞いたんだ」

「スカウトというのがクラス? という仕様だったの?」

 そそ、と頷く。

 対する山田さんは食い入るように前に乗り出し、目を輝かせている。

 ち、近い。彼女の髪が触れそうで触れないくらいの至近距離だぞ。

「あ、あの、山田さん」

「ん? ご、ごめんね。つい、夢中で。クラスというのは松井くんや私もスカウトになれたりするのかな?」

「間違いなく強化イベントなんだけど、『神殿』なるところで祈るんだと」

「『神殿』……うーん、今まで一度も聞いたことないわね……」

 マーモを抱え込むようにして悩む彼女を不思議に思う。

 神殿のことを聞いたかどうかを思い出そうとしているのだろうけど、振り返ることなんて早々ないはずなんだよな。

 いや、待てよ。俺の尺度で推し量ったら間違える。山田さんは陽の者。いろんなクラスメイトと沢山会話を交わしているはず。

 吉田君の「ヘパイストスの槌」が鍛冶機能を持つように、神殿の機能を持った神器があったもおかしくないだろ。

 それで、クラスメイトの引いた能力を思い出してるんじゃないか?

「山田さん、思い当たるような神器持ちはいた?」

「え? あ、ううん、これまでの回を思い出していたの」

「これまでの回?」

「こ、こっちの話。待機組の神器持ちに聞いてみるね」

「あ、神器だけじゃなくて真理の人にも聞いて欲しい」

「うん!」

 ぐぐっと握りこぶしをつくる山田さん。

 神殿がコマンド的なものだったら、真理の可能性もある。

 神殿の機能が使えそうな人探しは山田さんに任せた! 彼女から二日後に会おうと言ってくれたので俺は待つのみである。

 基本全部ソロでやろうとする俺だけど、全部が全部ソロでやろうなんて思っちゃあいない。

 ほら、吉田君に蛍光灯の強化をお願いしに行ったことだってあっただろ。

 俺は俺でダンジョンに神殿がないか探すミッションをこなすってことで。単に奥へ奥へ進むだけなのだけどね。

 毎日ダンジョンの構造が変わるから1階から55階まで全て踏破しているとは言えないけど、少なくとも探索した時は全部見て回ってから下の階へ降りていたはず。

 全部見て回るのはレベル上げのついでだけどね!

 そろそろ暗くなってきたし、ってことで立ち上がったら、山田さんが「あ」と声を出し俺の服の裾を引く。

「松井くん、手をこっちに」

「ん、え?」

 山田さんが俺の手を両手で握ってきた。手を握るなら握る前に一言言っていただきたい。

 普段から人と触れ合うことのないぼっちに、お手てを繋ぐはハードルが高いのだ。

≪山田ひまりから100ガルドでトレード希望がきています≫

「これって?」

「OKしてー」

「う、うん」

 了承すると、なんと「魔獣ガチャチケット」が5枚トレードされてきたではないか。

「よかったら使ってね」

「ありがとう! 集めてくれたの?」

「宝箱を開けていたら手に入ったの。25階まで宝箱を開けたんだよー」

「お、おお。それでガチャチケットが出たんだ」

 他にも武器とかポーションとかも出ていたとのこと。山田さんは「神器」持ちだから魔獣ガチャチケットを使うことができない。

 持ってても仕方ないから使ってね、とありがたく申し出てくれたってわけだ。

「武器もあるけど、いる?」

「う、うーん、今のところ吉田君に強化してもらったバールで必要十分だよ」

「おおー、強化ってすごいんだね」

「そそ、今のところ全て一撃でモンスターを倒すことができているよ」

 きっと、いや、確実に強化していないバールだったら何度も何度もバールで叩かないとモンスターを倒すことができない階層になっているだろうなあ。

 その場合、毎回必死で攻撃をかわしながらマーモのぶおんぶおんでモンスターをバラバラにしてもらわなならん。

 回避系のスキルを習得してはいるものの、強化バールがあるとないじゃダンジョン探索の危険度が全然変わるよなあ。

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