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第34話 私の良さがようやく理解できましたか?

 マーモから蛍光灯を預かり、ふうと一息つく。

 瑠衣さん、いや、グルゲルからもたらされた情報量が多すぎて絶賛大混乱中である。

「考えるのは後だ。ダンジョンダイブ中は無心になってひたすらモンスターを叩く。これです」

 誰に向けて言ったわけでもないが、口に出して宣言すると気持ち的に変わるだろ。

「一つレベルをあげたら53階を見に行ってみるか」

 代わり映えのない忍び足からのバールでズドンを繰り返す、繰り返す。

 なんかこう、今更ながら俺のダンジョン探索って超地味じゃね? いや、モンスターと激しい戦闘を行うなんてことは決して望んでいないので、構わないのだけど、地味な俺が地味な探索を続けているって、これほど絵にならないもんはないよなって。

 もし俺の探索を配信したとしたら、まったくPVが稼げないで間違いない。

 同じルーティンワークでも山田さんがひたすら宝箱を開けてきゃっきゃするなら、それなりに伸びそうな気がする。

 ち、ちくしょう、同じことをしてもこうまで違うとはこれいかに。

「べ、別に配信なんてしねえし! クラスメイトの中には配信用に動画撮影している人もいるかもな……いくら撮影していても元の世界に帰れなきゃ配信はできないぞっと」

 ダンジョンの配信をしたら世間の反応はどうなるだろうか。

 よくできたフィクションとして捉えられ、誰も現実だとは思わないよね、きっと。

 などと考えていたら、レベルが一つあがった。

 

 ◇◇◇

 

 54階まで探索して帰ってきた。レベルも54階で更に上がったぞっと。

 さあて、お楽しみの情報整理タイムだ。

 本日のご飯を用意しつつ、ノートとボールペンを準備する。何のかんので紙とペンは便利なんだぜ。

 タブレットかパソコンがあれば、そっちを使うけどさ。

 チーン。

 もう定番となったレンチンの音。自炊しようと思いつつ未だにやっていない。探索から帰ってきてからは疲れ切ってなるべく手間をかけずに腹を満たしたくなるし、寝て起きた後だと夜の探索があるから面倒になってしまって。

 毎日探索に出るんじゃなくて、休日を設け、自炊やら庭の散策やらをしてリフレッシュした方が却って探索も捗るかもな。

 学校も仕事も休日があるから捗るってもんだ。日曜日だけ休むようにしようか、よしそうしよう。

 冷凍弁当なるものを試してみたが、なかなかいける。

 油淋鶏とほうれん草のサラダにはるさめと卵の何かが入っていた。レトルトより味が濃くなくて外食に飽きた舌には良い。

 好みを言うともう少し薄味の方がよいのだが、それは自炊してからのお楽しみってことで。

「ごちそうさまでした」

 両手を合わせて、ふいいと息をつく。

 冷凍弁当にレトルトご飯だから、食べ終わったら洗うことなくポイっと捨てれて楽々っすよ。

 続いてノートを開き、グルゲルからの情報をっと。

≪降臨の仕様について≫

 降臨は最初からレベル最高なだけじゃなく、プレイヤースキル、身体能力も最高になる。

 レベルはともかく、プレイヤースキルと身体能力が最高になる秘密は『降臨』が『憑依』だからだ。

 憑依は英雄を身に宿し、英雄の心? 人格? が脳にインストールされる。

「この英雄ってのが厄介なんだよな。いくら全部最高でも頭の中に誰かがいるのはお断りだ」

 ガチャは自分で選択することができないから嫌らしすぎるだろ。

 そこでふよふよと宙に浮くイルカと目が合う。

「私の良さがようやく理解できましたか?」

「ま、まあ、俺にとってはイルカでよかったよ」

 聞いてもないのに口を挟んできたイルカに嫌々ながらも応じる。

 真理、それと神器のことはいったん置いておいて、降臨の整理だ。

 降臨を引いたのは全部で四人。正義大好き英雄ウプサラ、ウプサラ大好き聖女リアーナ、俺様に任せろアグニ、飄々としたスカウトのグルゲルだったか。

「ええと確か、『アグニの化身』鈴木とか名乗っていたよな」

 てなると、アグニは鈴木君に入っている。そんで、グルゲルには高山さんだっけ。

 残りは攻略組3人のうち2人になる。攻略組って確か神崎君と榊君ともう一人だったよな。榊君ともう一人がウプサラとリアーナになる。

 神崎君は神器でダンジョンへ挑む超人って聞いているからね。

「だいたいまとまった」

 朝日が出て結構な時間が経ってしまった。シャワーを浴びて寝るかなあ。

 ん? まとめたら次はアクションじゃねえかって?

 グルゲルから得た情報をまとめただけであって、何かに生かそうってのは別の話だよな。鈴木君、グルゲルと会話したから(鈴木君とは会話になっていないが)、次は神崎君たちに何てことは微塵たりとも考えていないのであしからず。

「わざわざ人とコミュニケーション取ろうだなんて、恐ろしい」

「マスター、なかなかエキセントリックな考えをお持ちですね」

 問いかけていないのに質問モードになってしまったのか、イルカがどうでもいいことに返答する。

「えー、普通だろ普通」

「神器が憎いです」

「降臨はもっと憎いです。おっけ、だから会わない。理に叶っているじゃないか」

「そうですね」

 イルカも納得したことだし、さっぱりして寝るべ寝るべ。

 

「ふあああ」

 すっきりした目覚めである。そろそろ日が沈もうかといったところ。この昼夜逆転生活にもすっかり慣れてきた。

 慣れとは恐ろしいものだ。

 日が出ると眠くなってくる不思議。そうそう、慣れといえば、筋肉痛がなくなった。

 運動部でもなく、日夜ランニングをしているわけでもない俺にとっては、一日中歩きまわるだけでも疲労が半端なく、盾を持ち歩いたり、バールを激しく振り回したりしていたから筋肉痛も酷かったんだ。

 筋肉痛もなくなったし、寝たら完全回復するほどの疲労しか溜まらなくなった。

「今日は土曜日か、明日は完全休養にしようっと」

 週一回休むと決めた日がさっそく明日やってくるってわけさ。

 ぼーっと公園のベンチで寝そべったり素敵な時間を過ごそうじゃないか。素敵な休日を想像し牛乳を一気飲みする俺なのであった。



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