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第24話 快調に進む

 すっかり忘れていた、いや、意識していなかったが、モンスターの頭上に名前が出るんだよ。

 ラットマンとかペーパーゴーレムとかね。それで、表示名の文字色が違っていたじゃない。

 同じモンスターでも文字色が変わっていたりした。驚くほどのことでもないのだけど、文字色は俺とモンスターのレベル差によって決まる。

 俺とのレベル差がどれくらいかは分からないけど、俺の方がモンスターよりレベルがだいぶ高かったら青色、逆に低かったら赤色になるっぽい。

 間は青から緑に変化し、黄色を経て紫から赤色になっていく。

 唐突に意識し始めたのは羊に騎乗して一気に階層を進もうと思っているからなのだ。モンスターの表示が青色だったら、忍び足の判定に失敗してもなんとかなるかなって。しつこいくらい忍び足の判定のことを気にしているのだが、対策もできる限りやった。

 注意すべき項目にモンスターの表示名が青か緑じゃなきゃレベル上げをしよう、が加わっただけに過ぎない。

 石橋を叩きまくって渡る、ような性格ではないのだけど、自分の命がかかっているとなればなるべく安全を確保したいと考えるのは当然と言えば当然である。

「お、階段発見。降りるぞお」

「めえええ」

 順調順調。マッピングをしながら、通り道にモンスターがいれば羊から降りてバールで一撃食らわせ、進む。

 階段を降り、初の18階へ突入する。

 羊の速度を緩め、警戒しつつT字路へ向かう。T字路の突き当り右手にモンスターがいた!

 お、あの姿は表示名をみなくても俺でも予想が付くぞ。

 ワニのような顔をした人型のモンスターだ。胸だけを覆う皮鎧に黒のズボン、左手にロングソード、右手にスモールシールドを構えた姿だった。

『リザードマン』

 表示名には予想通りの名前が書かれていた。気になる文字色は青色である。

 ホッと胸を撫でおろし、羊に乗ったままゆっくりとリザードマンに迫った。あ、リザードマンは単独じゃなく、二体いる。

 リザードマンの右側をすすすっと通り抜けるも、奴らがロングソードをこちらに向けてくることはなかった。

 よっし、忍び足の判定に成功している。

 お次はバールで背後から叩いてみよう。万が一に備え、マーモにいつでも蛍光灯を渡すことができるようにして。

 ベコン。

 リザードマンは断末魔をあげることなく、光の粒となって消える。

 おおっし、一撃で仕留めることができた! まだまだ一撃で進めそうだな。

「リザードマンは大丈夫だった。他の種類のモンスターが出たら同じように試そう」

『ブドウはまだかモ?』

「ほい」

『もっちゃもっちゃ』

 一応待機してもらったので仕事は果たしたってことで、マーモにブドウを一粒進呈する。

 

 慎重に進んでいたのだが、いつの間にやら20階に到達した。現在の時刻は明け方の5時45分。

 今のところモンスターの表示色は全て青色で、忍び足の判定も全て成功している。

 青色だったら成功確定なのかどうかは不明なので、気を緩めることは厳禁、厳禁だ。油断禁物、不注意こそ最大の敵と肝に命じる。

 レベルが上がり辛くなってきたとはいえ、山田さんと潜ったり、マーモの実験とかで何度も15階辺りを探索していたので結構上がってるんだよな。

 え? いくつまであがったんだって? なんと、レベル76まであがってるんだわ。

 エレベーターで移動できる階まで進んだから、レベル上げをして帰ることにしよう。

 

 20階まで進んでから三日が経過した。

 なんのかんのでマーモを使うこともなく、慣れもあってなんと40階まで進んだのである。すごいぞ、俺、誰か褒めて。

『えらい、えらいモ』

「……嬉しくない」

『どっちでもいいから梨を寄越すモ』

「……ほい」

 褒めてくれる人などいるはずもなく、マーモに頼んだら虚しくなった。もう二度とやらんからな。

 梨のお値段、プレイスレス。

 そうそう、モンスターの表示色がいつ青じゃなくなるかドキドキしていたのだが、ちょうど40階で緑になったんだわ。

 そんなわけで、朝の9時までレベル上げをしたところ、無事、表示色が青になった。

 40階でもまだバール一撃でモンスターを仕留めることができるのはありがたい。吉田くんにバールを強化してもらった恩恵だろうな、きっと。

 持つべきものは友である。

 ……ごめん、言ってみたかっただけ。で、でもさ、俺は彼のことを友達だと思っているんだ。嘘偽りなく。

 もちろん、彼の電話番号も某アプリのIDも知らないんだがね。

 頑張れば明日、レベル上げ重視で進めば明後日にいよいよ50階に到達できそうだ。

 相当周回遅れだけど、俺もようやく攻略組のスタート時点に立てるってわけさあ。

 

 満足して眠りにつき、夕方に起きる。

「ふああ、何食べるかなあ」

 冷凍のラザニアという珍しいものを発見して食べずに冷凍庫に入りっぱなしだったことを思い出し、さっそくレンジでチンをすることにした。

 他に何食べようかな。起きたてにラザニアは重いかもしれんと今更ながらに思ったが、既にレンジは動いているため、後の祭りである。

 だったら、他のものを軽めにしようか。

 ヨーグルトにブルーベリージャムだろ、それとミルクティーとかどうだ。

 チーン。

 レンジの心地よい音が響き渡り、ウキウキとほっかほかになったラザニアをテーブルへ運ぶ。

 ちょうどお湯も沸いたのでカップに直接ティーカップを入れて、お湯を注ぐ。おっけおっけ。

 ヨーグルトにブルーベリージャムを垂らし、完成だ。

「いただきまあす」

 手を合わせもしゃもしゃと食べはじめると、足元に強烈な気配が。そうだった。マーモットは引っ込めずに出しっぱなしにしているんだった。

『リンゴを寄越すモ』

「ほいさ」

 バスケットに入ったままのリンゴをぽいっとマーモットに渡す。


「ふう、食った食った」

 案外いけるものだな。満足したぜ。

 夜は何にしようかなあとゆっくりミルクティーを飲んでいると、何日かぶりに部屋のチャイムが鳴る。

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