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第19話 魔獣ガチャ

 翌日、時刻は深夜1時過ぎ、俺はいつもの日常に戻っている。いつものといっても数日間のことだけどね。

 あー、実家のような安心感とはまさにこのこと。ソロでうろうろとダンジョンを彷徨う虚無タイム。これである。

「作業感が半端なくて辛かったが、よくよく考えてみたら学校で過ごす時間も似たようなものだった」

 学校に行くだろ、ぼーっと授業を受けるだろ、そんで、誰も話しかけてくるなあ、とオーラを出しつつ休憩時間を過ごす。

 昼は誰もいないお気に入りの場所で食べ、午後も同じだ。

 一方、ダンジョンは今のところ忍び足効果で作業になっているから、人がいないだけ教室より居心地がいいさえある。

 我ながら分析してて悲しい。

 き、昨日は俺だっていっぱいご学友と喋ったんだからな。だから分かった「実家のような安心感」を。

「……あ、思い出した。10階に行こう」

 15階から更に下の階へ向けて進軍していたのだが、昨日忘れていたことを唐突に思い出した。

 いつ忍び足の効果がないモンスターが出てくるかも、ってびくびくしながら進んでいただろ。進むのをやめたらいいって話だが、それはきつい。

 だって自らクリアを諦めることになっちゃうからね。誰かがクリアしてくれるまで待っているなんて性に合わん。

 真のぼっちとは自分だけなのである。吉田君と山田さんに1階を案内したこととはベクトルが異なるんだ。

 待機組の保険を確保することは積極的に協力したいことだった。別にクラスメイトが敵ってわけじゃあないからさ。

 俺は俺で進める。それが何周遅れだとしてもね。ま、まあ、誰かがクリアして脱出できるならそれはそれでいい。

「吉田君にバールを強化してもらったりはおっけーだ。いや、幸運だった」

 何もかも一人で、って気持ちは毛頭ないのだ。我ながら面倒くさい性格をしていると思うよ。

 前置きが超長くなってしまった。忍び足が利かないモンスターが出た時に身を守ってくれる装備があればいいんじゃね、と思ったわけさ。

 欲しいものは盾だ。

 んで、盾を強化できる人がいたらなあって、山田さんに聞こうと考えたってわけさ。

「10階に行くのは盾を手に入れるためだ。宝箱から盾は結構出るんだが、持って帰ってなかった」

 誰に向けて言っているわけでもない。真のぼっちとは独り言が多いものなのだ。

 以前、木の盾を入手して一発でパカンといかれてから重たいし、忍び足でガンガン進めていたから敬遠していた。

 昨日神器の威力を見て、やっぱ装備って重要だよな、と思い直し、盾があれば一発で壊れても投げ捨てて逃走可能……と捕らぬ狸の皮算用をしたのだ。

「持ち歩くのが辛ければ別の案を考えればいい」

 盾を入手してお散歩すりゃ分かる。

 

 ◇◇◇

 

 10階から5階まで箱探しに精を出してきたぞ。

 一言に盾といっても大きさも材質も様々なんだよな。1階の宝箱に比べると品質が良くなっている……いや、種類が多くなっている。

 材質は木か金属か両方の合わせ技のどれかなのだけど、大きい盾は持てない。

 大きな盾は縦が120センチ以上もあるからな。直径80センチくらいの盾がギリ持って歩けるサイズだが、全て金属のものはこのサイズでも厳しかった。

 木を鉄で補強した盾を腕に固定するのが一番マシそう。背負うのが楽だが、構えることができないから本末転倒である。

 バールは腰から下げ、バトルの時は右手で持つ。左腕に盾を固定していざとなれば構える。

「よっし、これで行こう」

 盾は簡単に投げ捨てることができるように固定方法にも工夫を凝らした。

 紐を引くとすとんと盾が落ちる。足に当たらないように注意しないとな。

 予備の盾も二つあるし、とりあえずこれで行ってみるか。

 

 そしてまた翌日。

「思ったより疲れるな。左だけ重いから肩も凝る。いや、体を鍛えていると考えるんだ」

 片側だけ重いと鍛えても体幹が余計悪くなりそうな気がする。

 今のところ、最高到達階は17階で20階を目指しているといったところ。ダンジョンは広いし、毎回マップが変わるのでなかなか進まないんだよな。

 イルカにもこのまま進んだらクリアまで膨大な時間がかかると言われ、萎えてきていた。

 山田さんたちのことがあって、ちょっとばかし気力を持ち直したものの、虚無感は拭えない。

 といっても進むのを諦めるってわけでもなく、盾を装備し進んでいたのだが、余計に進行が悪くなった。盾は荷物だからね。仕方ないよ。

「ん?」

 新たなスキルでも模索しようとメニューを見つつイルカに何を聞くかなあと考えていたら、ある違和感に気が付く。

「ガチャ? ガチャって何だ。もう一回試せるドン?」

「もう一回試せるドンはありません。あなたのパートナーは私、『物知りなイルカ』で固定です。喜びなさい」

 聞いてもないのに回答してきやがった。忘れがちであるが、イルカは常に俺の近くでふよふよと浮いている。

 いやだって、スマホアプリにガチャって出てるって。

 えー、何々、魔獣ガチャって書いている。いつの間にか宝箱から拾っていたようで、2回引くことができるって表示されているぞ。

「魔獣ガチャって?」

「魔獣ガチャは素敵な魔獣がお友達になってくれます。つまり、仲……」

「それ以上は言うなよ!」

「魔獣ガチャで引いた魔獣は実体化させないと使えません。ただし、実体化数は決まっています」

「詳しく説明を頼む」

「表示させます」

 え、スマホに説明文が出てきたぞ。こいつ、説明をするのが面倒になったんだな。

「説明文が出せるなら他の質問でも全部出してくれよ」

「面倒です」

 こ、こいつ……! いや、魔獣ガチャに関しては元から説明文が用意されているものだったんじゃないか?

 情報を得ることができるのなら何でもいいや。

 どれどれ、魔獣ガチャについて――。

 ・魔獣ガチャは「真理」の所有者のみが対象となります。

 ・魔獣ガチャチケット1枚につき、1回ガチャを引くことができます。

 ・魔獣カードは実体化しなければ使うことができません。

 ・一度に実体化できるのは2体までです。

「ふむ、『真理』専用の強化イベントか」

 さっそく魔獣ガチャとやらを引いてみることにするか。

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