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第11話 進んだはいいが

 今日から二階だ、と意気込んでいるのだけど、若干の予定変更を強いられた。

 さすがに強いられた……は適切な表現じゃあないな。

 本日のダンジョンアタックタイムはこれまでより30分遅い。というのは、エレベーターを使おうと鼻歌混じりに進んでいたら人の影が目に入ったのだ。

 とっさに忍び足を使い、入場エリアで人影が消えるのを待った。人影といっても知らない人じゃあなく、クラスメイトだろうって?

 そうなんだろうけど、なんかこう、察してくれ。自販機で服やらも買うことができるので、見えた人影が制服じゃあなくってね。

 ひょっとしたら、クラスメイトじゃないかもしれないだろ。クラスメイトじゃない場合、危ない人の可能性もあるわけで、まあ、そんな感じでじーっとしていたわけだよ。

 やむを得ない事情がありいつもより30分遅延したが、宝箱を開けペーパーゴーレムを叩く生活もこれで終わりだ。さてさて、二階はどんな敵が待っているのか。

 二階に降りた。

 ダンジョンの様子は一階から変化なし。俺の動きも一階と変わらない。すたすたと一定の速度で淀みなく歩くだけである。

 ん、正面に人型のネズミがぼーっと立っているじゃないか。一直線の通路上なので向こうからも俺の姿が見えているはずだが、気が付いているようには見えないんだよな。

 人型のネズミの頭上にはペーパーゴーレムと同じで名前が表示されている。表示色は青だ。

『ラットマン』

 まんまな名前だった。ラットマンは俺の胸くらいの身長で猫背、手足は短く、ショートソードに革の鎧といった出で立ちだ。

 きらりと刃が光ったような気がしたショートソードを見て、ゴクリと喉を鳴らす。

 そうだった。そうだったよ。遠距離武器や槍を用意してもいいなと考えていたんだった。

 ペーパーゴーレムの相手をしているうちに、頭から抜けていたよ。ペーパーゴーレム相手だと鈍器の方がやり易いからね。

 槍や弓を持った場合、それぞれスキル枠を一つ使うのも考えものだ。

 刃物が怖いなあと及び腰であったが、近寄らなければ始まらない。

 バールが当たる距離までにじり寄ってもラットマンはぼーっとしたままだった。

 さすがにおかしい。

 待てよ。安全性を高めるために真っ先に取ったスキルの効果じゃないか? そう、忍び足だよ。

 忍び足は歩いているだけで熟練度があがり、既にカンストであろう100まで到達している。

 忍び足は意識しなくとも常時発動しているパッシブスキルな上に自分の足音は普通に聞こえてくるんだよね。効果が実感し難く、ペーパーゴーレム相手だと気がつかれているのか、気が付かれていないのかどっちなのか分からん。エレベーターのところにいた人に気が付かれなかったので、忍び足の効果があったのか?

 単に俺のことを石ころ程度に思って気が付いていたけど、気にも留めていなかった可能性の方がありそうだよ。

 しっかし、対人はともかくネズミには効果がある。取ってて良かった忍び足。見事な手の平返しであるが気にしてはいけない。

 ぼーっとしているラットマンの背後からバールで攻撃する。

 グシャアア。

「……え」

 背後からの一撃でバールが革鎧を突き破り、深々とラットマンの体に喰い込んだ。

 とおもったら、光となって消える。

≪ラットマンを倒しました≫

 ペーパーゴーレムより弱いんじゃ……?

 完全なる先制攻撃ができたから楽勝だっただけ、な気もする。ラットマンはペーパーゴーレムと違って俺と同じくらいの速度で動けそうだし。

「忍び足、神過ぎだろ!」

 スキルの重要性を思い知った。レベル上昇によるステータスアップとスキル枠の拡大。なるほど、うまくできているよ。

 ソロなので何もかもをカバーすることはできない。スキルが超有用だと分かったので、ますますスキル選択に悩んでしまうよ。

 

 またしてもラットマン発見。接敵即殺!

≪ラットマンを倒しました≫

 宝箱もちゃんと置かれていたぞ。よしよし、一階とは異なるアイテムが出てくることを期待しつつ開けたらガルドだった。

 一階より若干入っているガルドが多い。ガルドはいくらあっても困らないし、嵩張らないからありがたいっちゃ、ありがたい。

 二階のモンスターはラットマンのみであることが確定かな。一階と同じ広さなら既に7割くらい探索したが、ラットマン以外にエンカウントしていない。

 ビビりまくっていた俺がいうのもなんだが、今のところ超地味だ。出てくるモンスターは一種類だし、道は平坦、マップをただただ埋めていく作業である。

 50階になると様相が異なるのかねえ。

 色んなギミックがあったら、それはそれで文句を言うのだろうけど……地味で平和な方が良いに決まっているよね。贅沢を言っちゃあいけねえよ。

 ラットマンを一撃で倒すことができるからか、二階を踏破したもののまだまだ時間がある。


 というわけで三階へ。

 三階もバルーンという風船のようなモンスターが一種類だけだった。こいつはこちらから攻撃しても反撃してこない。

 嫌な予感がした俺は素手でバルーンを掴み振ってみた。中には何も入っていなさそうだ。

 どうも引っかかるんだよな。バールで叩いたら破裂して爆風でダメージを受けたり……などしそうな予感がビンビンです。

 結論、バルーンを無視して宝箱だけ取ることにした。君子危うきにってやつだよ、うん。


「んー。四階をちょい見てから帰るか」

 と、ここまで来て俺はあることに気が付く。洋館に戻るには一階まで戻ってからエレベーターに乗らないといけない。

 足腰はまだ大丈夫。いつもより探索時間は長くなってしまうが8時間くらいまでなら平気だろ、多分。

 四階にはこれぞ最初の雑魚敵の代表であるゴブリンがいたではないか。ラットマンと変わらず忍び足効果で背後からバールの一発で仕留めることができた。

 一階からここまで大して難易度が変わらないな。

 

 ◇◇◇

 

 結局五階まで行き、五階からエレベーターに乗って帰ってきた。

 特筆すべきことはなく、あれから二日で十五階まで到達したんだよね。忍び足が抜群な仕事をして、進むに支障はない。

 不意打ちからのバールで殴りつける一本でここまできた。

 手に汗握るギリギリのバトル……ってものは何も無く、作業感が強い。楽に進めているのに階数が稼げてないのは、ダンジョンの広さに起因する。

 十五階の安全地帯に念のために避難し、今の俺の唯一の話し相手へ声をかけた。

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― 新着の感想 ―
スタート階が必ずしも最弱階ではないって設計は良い盲点設計ですねぇ
ひまりちゃん、早くこのボッチを捕獲しないと大変な事になりそ
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