表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/231

第95話 知の渦、白き意思

フィルメリアの黄昏が、書院の高塔に赤い影を落としていた。


崩れた講堂の隅で、リクたちは息を整えていた。ユウは無事だったが、精神的な疲労が色濃く刻まれている。アルマは沈黙を守り、書類の山を睨んでいた。


「……予想以上に早かったな。王国の内通者が、ここまで深く入り込んでいるとは」


リクが低く呟く。ヴァルスの行動は組織的で、単なる裏切りではなかった。


「書院の内部構造、研究資料、影の収容法……全てが王国側に渡っていたとすれば、この都市の機能は……」


アルマが言葉を切った。


そのとき、部屋の扉が控えめに叩かれた。


「リク殿、アルマ博士、理事会からの緊急招集です」


現れたのは、書院の若き司書、ルアだった。彼女の手には封書が握られている。


「理事会……まだ君らを信じてくれてるのか?」とカイルがつぶやく。


「違うな。たぶん、試されるつもりだ」リクは答えた。



理事会の議事堂は、厳かな沈黙に包まれていた。半円状に並んだ七人の賢者。その中央で、リクとアルマは立たされていた。


「影の共生、それ自体を否定するつもりはありません」


そう切り出したのは、老齢の賢者ゲルメスだった。だがその目は厳しく細められている。


「だが、暴走の事実がある以上、外部者の主張を鵜呑みにするわけにはいかない」


「それは当然の懸念です。ですが……ユウは影に飲まれかけながらも、あれだけの制御を成功させた。これは一つの進歩です」


アルマが冷静に応じる。


「ならば、さらに証明していただきたい。明日、理事会にて再度の影制御を実演していただきます」


明確な指示。だがそれは警告にも等しかった。


リクは静かに頷いた。


「……やりましょう。俺たちは逃げるつもりはありません」



夜、書院の裏庭。


リクはひとり、木の根元に腰を下ろしていた。影は静かにその背後に揺れている。


「……仲間を信じるって、難しいな」


ぽつりとこぼれた独白。


ユウの力、カイルやエリナの支え、アルマの知性。


それでもこの都市には、何層もの虚偽と疑念が重なっていた。


「……リク」


振り向くと、そこにはルアがいた。司書服を脱ぎ、白いローブをまとっている。


「ルア……?」


「あなたに伝えたいことがあります。フィルメリアには“もう一つの理事会”が存在します」


リクの目が細められた。


「影の力を封印ではなく、“軍事利用”するために暗躍する派閥。それが“白塔協議会”」


ルアは静かに言った。


「私はかつて、その一員でした」


重苦しい沈黙が流れる。


「……なぜ、今話す?」


「あなたたちを見ていて、信じたくなったんです。影は恐れるものじゃない。共に在るべきもの。そう証明しようとしてるあなたたちを」


リクはルアの瞳を見つめた。


それは、真実を語る者のまなざしだった。


「明日の再実験、協力させてください。あの場所に、“協議会”の密偵が紛れています。私は、そいつを突き止めます」


──夜の影が深くなる中、静かに覚悟の火が灯っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ