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第8話 訓練の日々

町のギルドでの生活が始まってから数日、リクは訓練に明け暮れていた。弓の正確な射撃、短剣を使った素早い攻撃の練習。そして、魔物使役者としての能力を磨くため、ゴルムと影狼との連携を強化していた。


訓練場には常に冒険者たちの声が響いていた。彼らの戦闘訓練や情報交換の様子を見ながら、リクは刺激を受け続けていた。


「リク、次は動く的を狙え。」


教官のグライスが指示を飛ばす。動き続ける的は小さく、リクは集中して弓を構えた。狙いを定めながらも、ゴルムが隣で小さく唸る声が聞こえる。


「大丈夫だ、ゴルム。次は俺が的を射抜いてみせる。」


深呼吸し、リクは指を引き絞った。動く的をじっくりと見据え、タイミングを合わせて矢を放つ。矢は動く的の中心を見事に射抜いた。


「いいぞ。その感覚を忘れるな。」


グライスはリクの訓練の様子を見ながら頷いた。


「よし、弓はだいぶマシになったな。ただし、これだけじゃ実戦じゃ通用しない。明日は先輩冒険者の狩猟に同行してみろ。」


翌日、リクは先輩冒険者と共に森での狩猟に加わった。狩りの手順や動物の動きを読む方法、さらには弓を使うタイミングを実際に学びながら、経験を積んでいった。


「一人じゃ気づけなかったことが多い……。俺にはまだまだ学ぶことがある。」


帰り道、リクはゴルムに向かってそう呟き、リクの胸に達成感が広がった。それと同時にさらなる課題が頭をよぎった。


次の日、グライスに声をかけた。


「教官、弓のこの動きで戦えるのは距離が取れる場合だけですよね。もっと接近戦を鍛えないと……。」


グライスは軽く笑みを浮かべ、短剣を取り上げた。


「その通りだ。遠距離での弓はお前の強みだが、距離を詰められたら短剣が命を救う。その訓練もやるぞ。」


リクは頷き、次の課題に取り組み始めた。短剣の素早い動きを練習する中で、教官から影を利用した動きの重要性を教えられる。


「リク、影を読め。敵の死角を作るんだ。影は味方にも敵にもなる。」


その言葉はリクの心に深く刻まれた。影系の魔物使役者として、自分が何を活かせるのか。その答えが少しずつ形を取り始めていた。


ある日の訓練中、リクはゴルムと影狼を使役しながら、複数の的を同時に狙う訓練をしていた。ゴルムが的を引きつけ、影狼がその背後から奇襲を仕掛ける。その動きをリクがコントロールすることで、三位一体の戦闘を完成させる試みだった。


「ゴルム、右に回り込め! 影狼、背後を取るんだ!」


指示を出しながらリクは自らも動き、弓を構えて矢を放つ。だが、次第に頭痛が強くなり、視界が揺らいできた。


「くそ……まだ終わってないのに……。」


額に汗が滲み、呼吸が荒くなる。ゴルムと影狼はリクの変化を察知し、動きを止めて彼のそばに寄り添った。


「休め、リク。無理をするな。」


グライスが厳しい声で制止する。リクは歯を食いしばりながらも、その場に膝をついた。


「でも、もっと練習しないと……。」


「お前の体が壊れたら何もできない。魔物使役は確かに強力だが、その代償を軽視するな。」


グライスの言葉に、リクは苦々しく頷いた。精神的な疲労が体全体に広がり、無理を続ければ取り返しのつかないことになる。


その夜、リクは自分の限界について深く考えた。これまでの戦闘で感じた疲労感が、戦いを続ける上での障害になることを実感していた。


「俺のやり方だけじゃ足りない……新しい方法を考えなければ。」


影を活かし、ゴルムと影狼を支えるために、自分自身をもっと鍛える必要があると決意を新たにした。


翌日、リクはギルドのロビーで新人冒険者たちが集まっているのを見かけた。彼らはリクと同じように訓練を受けており、緊張しながらも互いに励まし合っている様子だった。


「お前も新人か?」


元気な声がリクに向けられた。振り向くと、明るい笑顔を浮かべた少年が手を差し出していた。その隣には、控えめながらも鋭い目つきの少女が立っている。


「ええ、最近ここに来たばかりです。」


リクは小さく答えたが、その声は少し震えていた。彼の心には、村での経験が蘇っていた。村の中で何をしても否定され、避けられてきた記憶が、目の前の二人と関わることへの一歩をためらわせていた。


「俺はカイル、剣士志望だ。こっちはエリナ。回復魔法を学んでるんだ。」


カイルの無邪気な笑顔がまぶしく感じられる一方、リクの視線は下がりがちだった。


「……よろしくお願いします。リクです。」


彼はなんとか挨拶を返したが、ぎこちなさが拭えない。エリナはその様子を見て、控えめに微笑んだ。


「リクさん、人見知りなの?」


「えっと、そうかもしれません……。」


リクの答えに、エリナは特に突っ込むことなく穏やかに話を続けた。


「でも大丈夫よ。ここは村とは違うから、きっとすぐ慣れるわ。」


その一言に、リクの心が少しだけ軽くなった。彼女の言う通り、町のギルドは村とはまるで違う雰囲気で、自分を否定する人はいないように感じられた。


「リク、お前は何を学んでるんだ?」


カイルが興味津々で尋ねてきた。


「弓と短剣です。それに……魔物使役も少し。」


その言葉にカイルの目が輝いた。


「魔物使役か! すごいな。俺たちにはできないことだ。」


「でも、負担が大きいって聞く。大丈夫なの?」


エリナが優しい声で問いかけた。リクは少し照れくさそうに微笑みながら答えた。


「大変なことも多いですが、なんとかやっています。」


彼らとの会話はリクにとって新鮮だった。同じ境遇の仲間がいることで、孤独感が薄れた気がした。


その夜、リクはギルドの宿舎でゴルムと影狼を見つめながら考えていた。自分には影に適性があると教官から言われたが、それをどう戦いに活かすべきか、まだ明確な答えは出ていない。


「影……暗闇に紛れ、敵の隙を突く。それが俺たちの戦い方になるのかもしれない。」


ゴルムが静かにリクの足元に寄り添い、影狼は低い唸り声を上げた。その様子に、リクは小さく笑みを浮かべた。


「ありがとうな。お前たちがいるから、俺も頑張れる。」


宿舎の窓から差し込む月明かりが、ゴルムと影狼の輪郭を淡く照らしていた。その光景は、リクの胸に小さな安堵をもたらした。


「俺たちは影を使う。そして、その影を光に変える力を手に入れるんだ。」


リクは新たな目標を胸に刻みながら、明日への準備を始めた。


「もっと強くなる。俺たちだけの戦い方を見つけてみせる。」


その決意は、彼の心をさらに強くしていた。



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