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第85話 闇に繋がる声

セインたちは敗走した。


リクたちはその場に立ち尽くし、ようやく訪れた静寂の中で息を整えていた。


エリナが結界の余波で膝をつき、カイルが彼女の肩を支えながら言った。


「……まさか、あいつらがここまで影の力を使いこなしてるとはな」


リクは黙ってうなずいた。だが、その表情に驚きはなかった。


「奴らの影は“力のための影”だ。……でも、あれを支援してる存在がいる。自分たちだけであんな技術を構築できるはずがない」


カイルも頷く。「……つまり、後ろに何かがいる」


「王国だ」


リクの言葉に、空気が緊張した。


「俺の父が王族の魔物研究班と接触していた記録が、トワ老人の書庫に残っていた。影因子の研究が表向きに封じられた後も、彼らは裏で動き続けていたんだ」


「その成果が……セインたちか」


「いや、彼らは“実験体”だ。王国の中に“影の軍制化”を狙う一派がいて、そのデータを集めるためにセインたちを動かしてる」


「でも、何のために……?」


「“影の兵団”を作るためだ。魔物と違って、影は物資を消費せず、忠誠さえ制御できれば無限に近い戦力になる」


リクは巻物を取り出した。


「これには、影の暴走リスクを抑える“媒介式”が記されていた。父がそれを編み出したのは、影の共生のため。でも王国はそれを“拘束術”として使おうとしている」


沈黙が落ちた。


カイルが吐き出すように言った。「……クソ野郎どもが」


「これが国を背負っての行動なら、俺たちが敵に回すのは“セイン”じゃない。“体制”そのものになる」


その言葉に、エリナが目を見開く。「……どうするの? こんなの、もう一個人の力じゃどうにもならない……」


リクは静かに首を振った。


「違う。“一人”じゃない。俺たちには、仲間がいる」


その時、影が再び脈動した。


祠の方向から、別の気配。


リクがすぐに影を展開すると、森の木々の間から小柄な影が駆けてきた。


「リク! よかった、無事だった!」


声の主は、クローネだった。


「遅れてすまん。こちらでも奇襲があった。村の南、影の残滓を追ってたら“別口”が動いてた」


「別口?」


クローネが差し出したのは、王国直属の魔導部隊の紋章が押された紙切れだった。


「こいつらが、正式な令状もなしに村の地層を掘ってた。目的は……『第零式因子』の回収だとよ」


「第零式……」


リクの心臓が嫌な音を立てた。


それは、父がかつて研究で“完全に失敗した”と記していた、影の初期融合実験のコード。


「それは……生きてるのか?」


「わからん。だが王国は、もうそれを回収可能だと判断してる」


影の因子。影の制御。影の移植。そして“第零式”。


王国が影を兵器として完成させるためのパズルの最後のピース。


リクは静かに言った。


「……それを止める。俺がこの力を持つ意味は、それだ」


仲間たちは言葉を返さなかった。ただ、拳を握り、肩を並べた。


その目には、同じ光が宿っていた。


この戦いは、もう個人の闘いではない。


影を奪い、影を売り買いし、影で人を縛る世界。


それに抗う者たちの“影の戦争”が、いま始まろうとしていた。



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