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第77話 影と歩む現実

影の迷界が、光の粒子となってリクを包み込む。契約を果たし、己を見出した者だけが、その試練を超えて現世へと帰還を許される――影の王の継承儀式の終焉だった。


リクは目を開いた。そこは、彼がかつて立っていた地、分断地帯の中心部。薄暗い空の下、まだ緊張が漂う拠点の広間だった。


「戻って……きたのか」


彼の隣には、新たに契約を果たした影の獣――名をまだ持たぬその存在が、静かに佇んでいた。


待ち受けていたのは、かつての仲間たち。クローネ、バルド、そして冒険者ギルドの数名。誰もが、無言でリクを見つめていた。


その瞳には驚きと、畏れ、そして――希望が混ざっていた。


「リク……お前、本当に……」


「――影の王となった」


リクはそう言い切った。もう迷いも、後ろめたさもなかった。胸を張り、真正面から視線を返した。


「この地を、変える。無価値とされた者たちが、希望を持てる世界に。俺はそのために、影と歩む」


クローネが静かに目を細め、バルドがにやりと笑う。


「やっと言うようになったな、小僧。そんで、どう動く? 現実は待ってくれねぇぞ」


そう――リクが影の迷界にいた数日の間に、状況は進んでいた。


魔族との交渉は停滞し、貴族派閥の妨害により交易ルートが封鎖された。さらに、民衆の中には影の力を恐れる声も出始めていた。


だが、リクの目は冷静だった。


「まず、交易ルートを取り戻す。民衆の不安には、新たな政策と“見せる力”で応える」


「見せる力?」クローネが眉をひそめる。


リクは頷いた。


「影の軍勢を用いた治安維持。だが、それは恐怖のためではない。“守る”姿を見せる。影が災厄ではなく希望であると証明する」


言葉を放つたびに、影がその足元で共鳴し、空気が震えた。


新たな王の風格。


バルドが感心したように頷く。「面白ぇじゃねぇか。ならば俺は、金の面で支援してやろう。影の王の“初陣”ってやつだな」


「俺も民への情報制御を強化しておく。扇動は速やかに鎮圧する」クローネも頷く。


そのとき、リクは確信した。


自分には仲間がいる。道を共に歩んでくれる者たちが。


それが何よりの力だった。


「――行こう、現実の戦場へ」


影が静かに彼の背に寄り添い、共に歩み出す。


かつて無価値とされた少年が、今や分断地帯の支配者として、一歩を踏み出した。


その影の先にあるのは、混沌か、希望か。


だがリクの目には、確かな光が宿っていた。


物語は、ここから始まる。

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