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第74話 兄の絶望
父の死からさらに数日後、リクは兄のもとへ辿り着いた。兄は王国軍の辺境部隊に所属し、リクにとって唯一の拠り所だった。
「兄さん……父さんが……リナも……みんな……!」
声を震わせながら語るリクを、兄は無言で抱きしめた。その腕は温かく、確かだった。
「大丈夫だ、リク。今度こそ俺が守る」
だが、それも長くは続かなかった。
王国の上層部により、リクの存在が問題視されていた。魔物使いの資質――それは王家にとって、制御できない脅威だった。
ある日、兄の部隊に召集命令が下る。
だがそれは、罠だった。
リクが偶然耳にした密談。部隊は“討伐対象”として魔物使いの村落に派遣され、実際には抹殺される予定だった。
リクは兄に伝えようとするが、先にそれを王国側の密偵に知られてしまう。
裏切り者として扱われた兄の部隊は、王国軍から奇襲を受けた。
リクは駆けつけたとき、すでに兄は血に塗れていた。
「兄さん……!」
「リク……逃げろ……これ以上、お前まで……」
兄の手がリクの頬に触れた瞬間、兵士の槍が兄の腹を貫いた。
目の前で崩れ落ちる兄の体。リクは、声にならない絶叫をあげた。
「うああああああああああああっ!!!」
世界が、砕けた。
家族を、すべて失った。
光は、どこにもなかった。
あの本を見つけるまでは




