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第73話 父の炎

リナを失った夜から数日後、リクの家もまた標的となった。


父は村の鍛冶師だった。無口で厳しく、不器用な愛情しか示さなかったが、それでもリクには分かっていた。父は、彼の存在を否定したことは一度もない。


だが、リナの件のあと、村の空気は決定的に変わっていた。魔物使いの血を引く者は“穢れ”として忌避され、見せしめを求める声が大きくなった。


リクの家にも火が放たれた。夜のことだった。寝ていたリクは煙に咳き込み目を覚ました。


「リク!逃げろ!」


父が彼を抱え、裏口へ向かう。だが、すでに村人たちが回り込んでいた。松明を持った男たちが、狂気に満ちた目で父を取り囲む。


「化け物の血を絶やせ!」「こいつが魔物を呼ぶんだ!」


父は立ち塞がり、剣を手に取る。「お前だけは……生きろ、リク」


リクは必死に抵抗した。「嫌だ!一緒に逃げよう!」


だが父はリクを力任せに突き飛ばし、焼け落ちそうな柵の隙間へと放り投げた。


最後に見たのは、炎の中で立ち向かう父の背中だった。次の瞬間、何人もの村人が襲いかかり、炎と血が舞った。


リクは震えながら、その場を離れた。


背後で家が崩れる音がしたとき、彼の中で何かが壊れた。

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