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第61話 前社会の黙魔

リクはライルの刃を打ち抜き、前に出る。もはやこの戦いは「誰が正しいか」ではなく、「誰が不正を引きずり出せるか」の闘いだった。


「忘れてないぞ、あの日。誰も助けに来なかった、あの家」


「あの日は、助ける価値がないと判断された日だろうね。」


強い前衛的な刃の交錯の中、ライルは徐々に言葉を残さないように読み上げるように話し続けた。


「でも、ここで終わりにしよう。お前は、別の方法を試すべき人間だ。悪でも、正義でもない。自分の意志で動ける者だ。」


その言葉は何かを成した人間だけが持つ仕上げのない遠い視線を含んでいた。


ライルは一度前に出ると、剣を捨てて振り返った。


「手を引け、リク。それが、たぶんこの正解だ。」


気抜けな集落に少し不安を覚えながら、リクは黒い眼を見開いた。


「それでも…この街の人々のために我々は戦ってるんだろ。なら、ここで逃げるわけにはいかない。」


ここに来て、初めてライルの正規を見た気がした。


その絶望や誤の隣で、どうして他人を思いやれるのか、不思議なほど正直な、しなやかな力だった。


……


戦いののち、水源はリクたちの手で完璧に復元された。ライルは保持のための罪を負い、リクに数日の内政の指示権を与える。


水の雰囲気がふたたびに薄く感じられる。だが、街の人びとは、新たな笑顔を見せ始めていた。


「これからだな…未来は。」


リクは、水面に反射する自分の形を見つめ、だが、その背後には、まだ気づかぬ黙魔が、水の深きさに隠れていた。

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