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第57話 蛇の尾と嘘の契約

リクたちが灰の峡谷から帰還して数日後、ヴェラーノの空気には、どこか騒がしいざわめきが漂っていた。


「交易路の襲撃者たち……どう考えても、ただの野盗じゃなかったよな。」


ライザがギルドの執務室で腕を組みながら言う。彼女の視線の先には、地図と襲撃者たちの装備の記録が並べられていた。


「装備が揃いすぎてる。補給ルートがあるか、誰かが後ろ盾になってる……ってことか。」


セインが椅子に背を預けながら、ひとつの木箱を開けた。中には、襲撃者のひとりが持っていた印章が入っている。


「この刻印……見覚えがあるな。貴族の家紋に似てる。だが、これは偽物かもな。わざとバレるように仕込んだ可能性もある。」


「わざと?」


リクが眉をひそめる。


「つまり、誰かが『偽の貴族勢力』を装って内乱を煽ってるか、真相から目を逸らさせようとしてるってわけだ。」


セインの言葉に、部屋の空気が緊張感を帯びる。リクは机に広げた地図に視線を落とした。


「俺たちの交易が成功すればするほど、誰かの計画を邪魔してるってことになる。なら、次の一手は……」


その時、部屋の扉が勢いよく開いた。現れたのは、金ぴかの鎧を着た男と、その後ろに控える側近の青年だった。


「やあやあリク君!いやぁ、君のおかげであの交易、順調だったねぇ!ふふん、実はね——」


「……また出たな金ぴか。」


セインが額を押さえた。


「ちょっと!あなたは監視しろって言ってたのに、なぜ自分で現場に出て行くのよ!書類全部私が処理してるの分かってる!?」


側近の青年がキレ気味に叫ぶと、金ぴかはバツが悪そうに笑った。


「いやぁ、だって現場主義ってやつだよ、うん!この目で見ないとわからないこともあるしさ!」


「わからなくていいことまで喋ってたでしょ!?また情報漏れの危機よ!」


「うっ……」


リクは思わず吹き出しそうになるのをこらえながら尋ねた。


「で?今度は何の話をしに来たんだ?」


「うん、実はね、ヴェラーノ北部の貴族の館で怪しい動きがあってね。そこに商隊が出入りしてる。彼らが内乱を画策してるかもしれないんだよ。」


「つまり、俺たちにまた忍び込めって?」


「うん、やっぱり話が早いね!さすが影の王!あ、報酬は金塊にしておくから安心して!」


セインとライザがそろって溜め息をつく中、リクは口元を引き締めた。


「やるよ。ただし今回は、罠の可能性もある。今度こそ、この内政の根本にいる『蛇の尾』を見つけるチャンスだ。」


次なる舞台は、貴族の館の奥深く。

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