第47話 影の王、政治に巻き込まれる
ヴェラーノの戦いを終え、影の王としての力を継承したリクだったが、予想外の事態が彼を待っていた。
「……つまり、俺がこの分断地帯の統治に関わるってことか?」
リクは困惑した表情で、目の前の金ぴか男——正式にはギルドの商業部門を取り仕切る男、バルド・ロエルを睨んだ。
「そういうことだ。お前、ただの魔物使いから影の王になったんだろ? 王様は統治をしなきゃならねぇ。」
バルドは気楽な笑みを浮かべながら、黄金に輝くマントを翻す。だが、その言葉にリクは深いため息をついた。
「俺は戦うためにここにいる。政治なんて興味ない。」
「甘ぇなぁ、リク。お前がどれだけ強かろうが、この分断地帯じゃ“力”だけじゃなく、“信用”も必要なんだよ。市民は戦いで飯を食ってるわけじゃない。」
「……」
リクは言葉を失った。確かに、この地帯には貴族派閥や魔族勢力、そして数多の商人ギルドが入り乱れており、それぞれがこの土地を支配しようと動いている。単純に剣を振るうだけでは解決しない問題が山積みだ。
「それに、最近魔族が商業に介入し始めてる。お前の力を見せれば、市民もお前を信用するようになる。」
「つまり、俺を担ぎ上げて、市場の安定を図るってわけか。」
「まぁ、そういうことだ。」
バルドがニヤリと笑った。その瞬間、扉が勢いよく開かれ、一人の魔族が入ってきた。長身で優雅な身のこなしをした青年——魔族代表のラグザ・ヴェルトだった。
「リク殿、どうやら政治の世界へ足を踏み入れる覚悟ができたようですな?」
「……お前までかよ。」
リクは頭を抱えた。戦うことには慣れていたが、こんな大勢の政治家気取りと駆け引きをするつもりはなかった。
「安心してください。我々魔族も分断地帯の安定を望んでいます。できれば、あなたと協力したい。」
「協力……?」
「ええ。あなたの影の力は、貴族たちにとって非常に厄介なものです。彼らはあなたを抹殺しようと動き始めています。もし我々と手を組めば、それに対抗できる。」
リクはラグザの赤い瞳を見つめ、彼の言葉の真意を探った。
「……要するに、俺を利用したいってことか?」
「そういう言い方もできますが、我々魔族はあくまで『共存』を望んでいるのです。」
「本当かよ。」
リクがため息をついた瞬間、さらに部屋の外から騒ぎが聞こえてきた。
「リク! 貴様みたいなヤツに、この地を統治する資格があるわけがない!」
それはリクの幼馴染であり、かつて彼を見下していた男——エドワードだった。
「……めんどくせぇのが来たな。」
こうして、影の王・リクの『政治との戦い』が始まったのだった。




