第40話 血塗られた記憶
廃墟の地下を抜けた先に広がっていたのは、異様な光景だった。
黒く歪んだ空間が広がり、空気は重く、まるで世界そのものが淀んでいるかのような錯覚を覚える。床には古の紋様が刻まれ、所々に打ち捨てられた武具や、崩れた石像の残骸が散らばっていた。
「これは……戦場の跡か?」
リクが呟く。ゴルムは低く唸り、影狼が鋭い目で辺りを警戒する。ライザは壁に刻まれた魔族の古い文字を指でなぞりながら、険しい顔をした。
「間違いない。ここで、かつて魔族と人間の戦争があった……それも、大規模なものだ。」
リクは奥へと進みながら、壁に触れた。すると、唐突に彼の頭の中に何かが流れ込んでくる。
──影の王よ。汝は血の契約に従い、この地を支配せし者なり。汝の器が目覚めし時、封印は解かれる。
「っ……!」
頭痛が走る。リクは額を押さえ、膝をつきそうになった。
「リク! どうした?」
ライザが駆け寄る。しかし、リクの意識は一瞬のうちに遠のき、別の光景が彼の視界に広がっていた。
それは遥か昔の記憶。
戦火に包まれた夜、剣と魔法が飛び交い、人間と魔族が血の雨を降らせながら戦っていた。
中央に立つのは、一人の黒き鎧を纏った男。その周囲に無数の影が渦巻き、彼は圧倒的な力で敵を切り伏せていく。
「影の王よ! 我らに祝福を!」
魔族たちが膝をつき、彼に忠誠を誓う。
だが次の瞬間、白銀の剣を持った戦士がその場に現れた。
「貴様をここで終わらせる!」
剣を振りかざし、黒き鎧の男と激突する。剣が闇を裂き、血飛沫が舞う。
影の王は、ゆっくりと膝をついた。
「これは、我が運命か……」
次の瞬間、彼の体は影へと溶け、消えていった。
「……リク!」
現実に引き戻されたリクは、息を荒げながら立ち上がる。
「見た……何かを見た……」
彼の手は震えていた。影の王と呼ばれた存在、そして彼に従う魔族たち。
「俺の……記憶なのか?」
「おい、まさかお前……」
ライザが何かを言いかけたその時、洞窟の奥から低い唸り声が響いた。
「……来るぞ。」
闇の中から姿を現したのは、異形の魔族だった。四足で這い、黒い鎖を引きずりながら、鋭い牙を剥き出しにしている。
「試練……なのか?」
リクは短剣を握りしめた。影狼とゴルムもすでに戦闘態勢に入っている。
「考えてる暇はない! こいつを倒さなきゃ、先には進めない!」
リクの中で、影の王の記憶がうごめいていた。
そして、闇の試練が始まる。




