第25 金ぴかの正体
リクがギルドの重厚な扉を後にし、冷たい夜風に包まれながら街を歩くその背後で、金ぴかの男は静かに微笑んでいた。その煌びやかな装飾の奥に潜むのは、単なる商人やギルド幹部としての顔ではなかった。
金ぴかはギルドの奥深くにある秘密の部屋へと足を運ぶ。重たい鉄の扉を開けると、そこには幾何学模様が刻まれた円卓があり、数人の影のような人物たちが待っていた。彼らはフードを深く被り、顔を隠している。
「リクは生き延びたか。」
一人の影が低い声で呟いた。金ぴかは静かに椅子に腰掛け、指先でテーブルを軽く叩いた。
「驚いたことに、期待以上だった。彼はただの駒ではないかもしれない。」
「駒? それとも鍵か?」
別の影が言葉を重ねる。金ぴかは少しだけ目を細め、微かな笑みを浮かべた。
「どちらでも構わない。この街の混乱の中で、彼がどう動くか……それが重要だ。」
金ぴかの本名はヴァルド・ルシオン。この街の表向きは商人ギルドの有力者として知られているが、その実態は古の遺産を追う秘密結社『影の秩序』の幹部の一人だった。彼らの目的は、古の遺産を手に入れることで世界のバランスを支配することにある。
ヴァルドは立ち上がり、壁に掛けられた古びた地図に目を向けた。その地図には見慣れた交易路だけでなく、失われた遺跡や古代の都市の痕跡が記されていた。
「リクには特別な何かがある。彼の力、魔物たち、そしてあの『影』……あれは偶然の産物ではない。」
「彼をどうするつもりだ?」
問いかけた影に対し、ヴァルドは冷ややかな笑みを浮かべる。
「観察する。そして必要なら、利用するまでだ。」
ヴァルドは指を鳴らし、部屋の奥から一人の暗殺者を呼び寄せた。その者は静かに跪き、命令を待っている。
「リクを監視しろ。彼が次にどこへ向かうのか、誰と接触するのか……全てを報告しろ。」
暗殺者は無言で頷き、影の中へと消えていった。
ヴァルドは再び窓の外、夜の街を見下ろしながら呟いた。
「リク、お前は果たして駒なのか、それとも……王なのか。」
その瞳には冷たい光と、どこか期待を孕んだ輝きが宿っていた。ヴァルドの真の目的は、ただ遺産を手に入れるだけではない。この世界の『影』を操る者として、新たな秩序を築くことだった。




