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第22話 激闘の果てに

山賊たちの猛攻が続く中、影狼に異変が起き始めた。その体から立ち上る黒い霧が一瞬強まり、全身が光を吸い込むように漆黒に染まった。そして、その姿が徐々に変化していく。体つきは引き締まり、四肢がより強靭に、尾が鋭く伸びた。瞳には赤い光が宿り、その存在感が明らかに変化していた。


「影狼……進化したのか?」


リクが驚きながらも見守る中、影狼は低い唸り声を上げると、新たな力を試すように戦場に飛び込んだ。その動きはこれまで以上に速く、鋭く、敵を翻弄するものだった。すると突然、影狼の体が一瞬だけ霧のように溶け込み、影そのものとなって移動する。


「影走り……!」


リクはその新たなスキルの存在に息を呑んだ。影狼は影を通して瞬時に位置を変え、敵の死角から攻撃を加えた。山賊たちはその動きを全く捉えることができず、次々と倒されていく。


「影狼、やるぞ!」


リクが叫びながら指示を出すと、影狼は応えるように唸り声を上げ、さらに猛攻を仕掛けた。


影狼が敵を混乱させている間、リクは無声の暗殺者のスキルを発動し、敵の背後を狙った。音を消し、存在感を薄めた状態で敵陣に潜り込むと、短剣を的確に急所に突き刺した。


「ゴルム、影の舞を使え!」


リクの指示に応じて、ゴルムが漆黒の影を纏いながら優雅に動き出した。そのスキル『影の舞』は、彼の動きに影を重ね、敵の攻撃を分散させる効果があった。ゴルムが影を操って敵を翻弄する中、リクは敵の隙を突いてさらに突き進んだ。


影狼、リク、ゴルムの三者がそれぞれの力を最大限に発揮し、戦局は徐々にリクたちに有利に傾いていった。


影狼が最後の一撃を放ち、残った敵を追い払ったことで、ようやく戦闘が終息を迎えた。


リクは膝をつき、荒い息を吐きながら短剣を地面に突き立てた。


「終わった……のか?」


影狼がリクのそばに戻り、その体に寄り添うように静かに座り込んだ。ゴルムも疲労の色を見せながら、リクを見つめている。


「ありがとう、影狼。ゴルム、お前たちがいなければ無理だった。」


影狼はその言葉に応えるように小さく吠え、リクの手に顔を擦り寄せた。


倒れた商隊員たちの中から、わずかに残った数人の生き残りが静かに立ち上がる。空気は重苦しく、誰もが疲労困憊していた。


「……やるじゃないか。」


ふと、低い声がリクに向けられた。振り返ると、監督役の男が苦笑いを浮かべながら近づいてきた。


「魔物使いの割には随分としぶといじゃないか。あいつらがいなけりゃ、てっきり真っ先に死ぬと思ってたが。」


リクはそれを苦々しい気持ちで聞き流しつつも、監督役の言葉の裏にある微かな賞賛を感じ取った。


「俺がしぶとかったんじゃない。影狼とゴルムが頑張っただけだ。」


「謙虚なやつだな。でも、正直驚いたぜ。普通の魔物使いなんて、囲まれたら本体を狙われて真っ先にやられるもんだ。けどお前は自分でも戦った。まあ、運が良かったとも言えるな。」


監督役が言葉を続けようとしたとき、カラカラと笑う声が後ろから響いた。


「運が良かった? いや、強いやつを倒したのは私のおかげだろ?」


その声に振り返ると、一人の女性が悠然と歩み寄ってきた。褐色の肌に短めの髪、そして腹筋がしっかり割れた引き締まった体つきが目を引く。その腰には二本の短剣が携えられていた。


「誰だ?」


リクが問うと、彼女は笑みを浮かべて肩をすくめた。


「ただの冒険者さ。名前を聞きたいなら、もうちょっと頑張ってからにしな。」


監督役が苦笑いを浮かべながら付け加えた。


「こいつはこの辺りじゃ有名な短剣使いだ。俺たちが壊滅する前に助けてくれたんだよ。」


「いやいや、助けたって言うほどじゃないよ。弱いやつを蹴散らしてただけさ。」


彼女が笑いながら言うと、リクは無意識に彼女の腹筋に視線を奪われた。その引き締まった体に、不覚にも少しドキドキしてしまう。


「おっと、見るならもっと堂々と見なよ。せっかくの自慢の筋肉なんだからさ。」


彼女がからかうように言うと、リクは慌てて目をそらした。


「別に……何も見てない。」


「まあいいさ。それより、あんた魔物使いの割にはやるじゃないか。」


彼女が真剣な表情に戻り、リクを見据える。


「だけど、今回は運が良かった。強いやつを私が片付けたからな。もし次もこんな状況になったら、生き延びられる保証なんてないよ。」


「分かってる。」


リクは短剣を握り直しながら答えた。その言葉に彼女は満足したように頷き、再び笑みを浮かべた。


「じゃあ名前を教えてやるよ。私はライザ。覚えておきな、次会った時にはまた驚かせてやるからさ。」


そう言って、彼女は軽やかにその場を去っていった。リクは彼女の背中を見送りながら、


「腹筋……」ごくっ。


影狼がリクをじっと見上げ、小さく頭を傾けた。ゴルムも唸りながらリクを見つめ、その様子に疑問を抱いているようだった。


「何だ、あいつら?」とでも言いたげな二匹の視線を感じながら、リクは慌てて視線をそらした。

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