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第16話 静かなる暗殺者の片鱗

リクはゴーレムとの激闘を終えた後、荒い息をつきながら壁に寄りかかっていた。手には光を失った短剣が握られ、ゴルムと影狼が寄り添っている。遺跡の奥深く、微かに感じられる静寂がリクの心に新たな疑問を生じさせた。


「今の俺の動き……何だったんだ?」


戦闘中、リクは自分の存在感が極端に薄れ、ゴーレムが彼を見失う瞬間が何度もあった。そして、最後の『心突』の際には、時間そのものが遅く感じられるほどの集中力が発揮された。


リクはその感覚を思い出しながら、心の中で自問自答を繰り返した。


「俺は……ただの魔物使いじゃないのか?」


ゴーレムとの戦いで発揮された力は、単なる努力や偶然では説明がつかないものだった。それは、彼が持つ役職の影響かもしれないという考えが頭をよぎる。


無声の暗殺者


リクが知らず知らずのうちに発揮していた能力。それは『無声の暗殺者』という極めて稀少な役職の力だった。この役職は、以下の特徴を持つ。


存在感の消失: 戦闘中、相手に気づかれにくくなる能力を発揮する。特に隠密行動や不意打ちで真価を発揮する。


音の消失: 移動や攻撃の際、ほとんど音を立てない。


隠蔽の得意性: 自分の位置や行動を隠す技術に優れ、追跡や捜索から逃れる際に強力な能力を発揮する。また、自身の性質やスキルも隠蔽することができ、敵や味方からその能力を完全に悟られにくい。


急所攻撃の特化: 『心突』のように、敵の急所を的確に狙うスキルを持つ。


しかし、それ以外の点では通常の暗殺者と大きな違いはなく、決して万能ではない。直接的な戦闘力では他の戦闘職に劣る場合も多い。


リクはその特徴についてまだ気づいていなかったが、戦闘中の経験が少しずつ自分の役職の片鱗を明らかにしつつあった。


「とにかく、ここを出て体を休めないと……。」


リクは立ち上がり、ゴルムと影狼を促して遺跡の出口へ向かった。その途中、彼はもう一度石碑の文字を見上げた。


"魔物は従わされる存在ではなく、共に歩む存在であるべき。"


「共に歩む……。俺も、お前たちと同じように一緒に歩んでいける存在なんだろうか。」


リクの問いかけに応えるように、ゴルムが静かに頷いた。その仕草に少しだけ心が軽くなる。


遺跡を抜けたリクは、一度拠点に戻り、自分の役職やスキルについて改めて考え直すことを決意した。戦闘や鍛錬だけでなく、自分自身を知ることが次の成長への鍵となるだろう。


リクは遺跡での経験を整理しつつ、次に目を向けるべき課題について考え始めた。自分がさらなる力を手に入れるためには、ただ戦闘を繰り返すだけでは足りない。資金、情報、そして人脈を得る必要がある。


「ギルドでの依頼や情報交換……それだけじゃなく、交易や商人たちの動きも重要だ。」


ゴルムと影狼を見下ろしながら、リクは声に出して言った。


「俺たちが強くなるためには、戦いだけじゃない。金も必要だし、人とのつながりも……。」


リクの頭には、街で目にした商人たちの活気や、ギルドの複雑な情報網の記憶が浮かんでいた。あらゆる冒険者たちが依頼や仕事を通じて成り上がるために、どれほどの資金や計画が必要か、漠然とだが理解し始めていた。


「冒険者だけじゃなく、商人や生産者、内政に関わる者たちもそれぞれの方法で世界を動かしている。それを利用する方法を見つけなきゃならない。」


リクはその考えを胸に刻み、夜明け前の冷たい風の中を歩き出した。その背中には、無声の暗殺者としての未知なる力、共に歩む仲間たちへの新たな決意、そして新しい道への期待が刻まれていた。



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