第10話 初めての実戦任務
新人試験の日がやってきた。リク、カイル、エリナは他の新人冒険者たちとともにギルドの外縁部へ向かい、指定された地域で魔物討伐を行うことになった。
「準備はいいか、リク?」
カイルがリクの肩を叩く。エリナも控えめながら心配そうに見つめていた。
「大丈夫。ゴルム、影狼、頼むぞ。」
ゴルムは低い唸り声を上げ、影狼は静かに頷いたように見えた。
試験の任務は、地域一帯を荒らす複数の中型魔物を討伐することだった。魔物たちは凶暴だが統率は取れていないため、比較的新人向けの任務とされている。しかし、リクはどこか不安を感じていた。
「この森、何か……妙に静かじゃないか?」
カイルは軽い口調で返したが、その瞬間、茂みから飛び出してきた影に反応する暇もなく彼の剣が弾き飛ばされた。
「くそっ! 急に来るなよ!」
現れたのは、長い尾を持つトカゲ型の魔物だった。鋭い爪と毒牙を備えたその姿は、想像以上に威圧的だった。
「カイル、下がって! エリナ、防御を!」
リクが叫ぶ間もなく、エリナが光の盾を展開し、カイルを魔物の攻撃から守った。リクは瞬時に短剣を構え、影狼に合図を送る。
「影狼、右から牽制! ゴルム、左を狙え!」
影狼が魔物の注意を引きつけ、その隙にゴルムが影を使って魔物の足を拘束する。しかし、魔物はその力を振り絞り、影の拘束を引きちぎった。
「やばい、これじゃ……!」
リクは冷静を装いながらも焦りを感じていた。硬い鱗に矢が弾かれ、短剣での攻撃も浅くしか刺さらない。魔物の鋭い尾がカイルに迫り、エリナが叫ぶ。
「カイル! 伏せて!」
カイルは地面に転がり込みながら剣を拾い、必死に反撃する。しかし、その攻撃は通用しなかった。
「くそっ、硬すぎる!」
リクは短剣を握り直し、ゴルムと影狼の動きを見極めながら次の指示を出した。
「影狼、もう一度後ろから回れ! ゴルム、脚を狙い続けろ!」
影狼が再び素早い動きで魔物の背後に回り込み、ゴルムの影が魔物の脚を捉える。その瞬間、リクは短剣を持って懐に飛び込んだ。
「これで……!」
リクの一撃が魔物の脇腹を捉えた瞬間、ゴルムが突然その体から濃密な影のエネルギーを放ち始めた。
「ゴルム、どうした!?」
リクの声に応じるかのように、ゴルムは一時的に力を高めた。その影の刃は倍の大きさになり、魔物の動きを完全に封じた。
「今がチャンスだ!」
リクは影狼に再度指示を出し、影狼が強化された力で魔物の首元を噛み砕いた。続いてカイルが剣を振りかざし、スキルを発動した。
「『爆裂剣』!」
カイルの剣が眩い光を放ち、一気に魔物の胴体に叩き込まれる。その力は通常の何倍もの威力を持ち、魔物の鱗を砕いて大きな傷を負わせた。
「やったぞ! これで終わりだ!」
その時だった。魔物が倒れる直前、鋭い眼光がこちらを見つめていたのだ。
「待て、まだ終わってない!」
リクが叫ぶが遅かった。魔物の体が素早く立ち上がり、尾の先端を刃のように鋭く変化させ、速い動きでリクたちに襲いかかってきた。
「死んだふりだと……!」
リクは冷静に戦況を見極める。影狼とゴルムは動きを止めず、新たな形態に対応しようと奮闘していた。
「エリナ、防御を最大限に! カイル、もう一度スキルを準備しろ!」
エリナは苦しそうな表情を浮かべながらも、全力で光の盾を強化し、リクたちを守った。リクはゴルムに目を向ける。
「ゴルム、影をさらに広げられるか?」
ゴルムの体が苦しそうに震えたが、再び影の力を増幅させる。その影は地面を覆い尽くし、魔物の動きを一瞬だけ封じた。
「今だ、カイル!」
カイルが渾身の力を込めて剣を振り上げた。
「『爆裂剣』!」
カイルの剣が再び光を放ち、魔物の頭部を一気に叩き割った。その衝撃で周囲の地面が揺れ、魔物の体が崩れ落ちた。
息を切らしながら、リクたちはその場に立ち尽くした。
「……勝ったのか?」
カイルが呟く。リクは周囲を見渡し、警戒を解かずに答えた。
「まだ油断するな。次がないとは限らない。」
その言葉を最後に、一同は慎重に森の奥へと進んだ。
「それにしてもすごいな、カイル。スキルの力ってすごい……。」
「俺も、まだ慣れてないけどな。」
しかし、リクはその勝利に完全に安堵することができなかった。森の奥から別の気配を感じ取っていたからだ。
試験が進む中、リクたちは徐々に他の冒険者たちが消えていくことに気づき始めた。緊張感を抱きながら進む彼らの背後で、足音が消えた瞬間、突然矢が飛んできた。
「伏せろ!」
リクが叫ぶが、その矢はカイルの盾に突き刺さった。矢の放たれた方向には、セインたちのグループが冷たい目つきでリクたちを見下ろしていた。
「……どういうことだ?」
リクが問いかけるも、セインたちは何も答えない。ただ次々と矢を放ち、リクたちを追い詰めていく。エリナが防御の魔法を展開しながら叫ぶ。
「何をしてるの、同じ試験を受ける仲間じゃないの?」
セインたちは返事をしないまま、無表情でさらに攻撃を加えた。矢の一本がリクの肩を貫き、彼は苦痛に顔を歪めた。
「くそ……!」
リクがゴルムと影狼に指示を出す間、セインたちは一言も発せずに動きを封じるような戦略的な攻撃を仕掛けてくる。
「リク、こいつら、本気で殺しに来てる……!」
カイルが血を流しながら叫ぶ。その時、背後から魔物の咆哮が響き渡り、セインたちは何のためらいもなく魔物を引き寄せるために音を立てた。
「お前ら……!」
リクの怒りが頂点に達したが、セインたちは冷たくその場を後にし、リクたちを魔物の群れの中に置き去りにした。




