第9話 小さな成功
数週間の訓練を経て、リクの成長は目に見える形となって現れていた。訓練場では、教官のグライスや仲間たちがその進歩を口にすることも増えてきた。
「リク、次はこの動きを試してみろ。」
グライスは短剣を構えながら、敵の攻撃をいなして反撃する模範的な動きを見せた。リクはその動きを目に焼き付け、慎重に真似をしようとした。
「もっと腰を落とせ、力ではなく速さとタイミングだ。」
グライスの指導を受けながら、リクは短剣を振るい、動きの流れを掴んでいった。以前よりも鋭さを増した動きに、グライスは軽く頷いた。
「いいぞ、その調子だ。」
リクの表情に微かな笑みが浮かぶ。成功の積み重ねが、彼に自信を与えていた。
ゴルムとの連携訓練でも、リクは工夫を凝らすようになっていた。影の刃を使った攻撃が主力だったゴルムだが、リクはさらにその特性を活かす方法を考え始めていた。
「ゴルム、影から相手の足元を狙え!」
指示を受けたゴルムは、訓練用の木製の敵の足元に影を伸ばし、その動きを封じる。次の瞬間、リクが素早く弓を構え、的確に矢を放った。
「的中だ。」
訓練場に響く仲間たちの声に、リクは胸を張った。ゴルムも誇らしげにリクの横に戻ってきた。
「お前となら、もっと複雑な動きもできるはずだな。」
リクはゴルムの頭を撫でながら、さらに高い目標を目指す意欲を燃やした。
リクは訓練場で教官のグライスに質問した。
「スキルって、どうやったら習得できるんですか?」
グライスは少し驚いた表情を見せたが、すぐに真剣な顔つきで答えた。
「スキルは身体能力や経験値、そして何より自分の武器との相性が重要だ。魔物使役者は戦闘スキルを持たない場合が多いが、お前はやりたければやってみろ。」
「魔物使役者がスキルを使えたらどうなるんですか?」
グライスは肩をすくめた。
「戦い方の幅が広がる。だが、お前の魔物たちと連携できるスキルを見つけるのは難しいだろうな。」
リクはその言葉に少し悩んだが、決意は揺らがなかった。
「それでも、試してみたいんです。」
グライスは両手を挙げ。
「残念だがやりかたは俺にもわからねぇ。そんな魔物使い見たことないからな」
スキルに関しては現状打つ手がなく悩んでいると、ギルドの掲示板に新しい張り紙が掲げられているのが目に入った。それは新人冒険者たちが正式なメンバーとして認められるための試験についてだった。
「リク、これ見たか?」
カイルが駆け寄り、張り紙を指差す。
「新人試験:ギルドの外縁部での実戦任務」
「ついに来たか……。」
リクはその内容を読みながら、小さく息を吐いた。試験では実戦での能力が試されることになるが、それは同時に、これまでの訓練の成果を証明する場でもある。
「リクなら大丈夫だよ。」
エリナが隣で微笑みながら励ましてくれる。その言葉に、リクの緊張は少し和らいだ。
「ありがとう。でも、油断はしないよ。」
リクは自分の影を見つめながら、ゴルムと影狼に視線を移した。
「俺たちの力を試すときが来た。」
ゴルムは低い唸り声を上げ、影狼も静かにその意思を示した。
「よーし、影狼もやる気みたいだし、俺もやるぞ!」
その時、ゴルムが急にリクの足を軽く引っ張った。
「おっと! な、なんだよゴルム、急に転ばせる気か?」
カイルが笑いながら横から声をかける。
「おいリク、それゴルムからの激励じゃないのか? もっと熱血系になれってさ!」
「ゴルムがそんなキャラなら俺たちのチーム崩壊するわ!」
エリナがくすくす笑いながら言葉を添える。
「でも、そんなゴルムも見てみたいかも。」
「ちょっと待てエリナ、やめてくれ! 想像するな!」
笑い声が溢れる中、リクの緊張は少しずつ溶けていった。
その日の夜、リクはギルドの屋上で星空を見上げていた。訓練を通じて少しずつ自信を取り戻し、仲間とともに歩むことができるようになった。それでも、試験への不安は完全には消えない。
「俺は……ちゃんと戦えるのか?」
独り言のように呟くと、隣でゴルムが小さく唸り声を上げた。それはまるで「お前なら大丈夫だ」と言っているようだった。
「ありがとう、ゴルム。」
リクは影狼にも視線を向けた。彼らの存在が、自分の力の一部であることを改めて感じる。
「試験で、俺たちの戦い方を証明しよう。」
そう決意すると、リクは深呼吸をして目を閉じた。明日は新しい挑戦の始まり。彼は自分の成長を信じて、一歩ずつ前に進むことを決めた。




