4/4
エピローグ
大人になっても季節は巡り、また十月が来る。私は小学校に赴いていた。
「はーい、一列に並んでねー」
今日は就学時健康診断で、小学校に入学する前の児童が健康診断を行う。廊下では子どもたちが指示に従って並んでいるのだろう。医者である私は内科検診の担当で、教室の一つに入って待機していた。
私の両親は開業医だったが、もう引退してしまった。私は親の医院を継ぐことなく、別の病院に勤務している。私が医者を志したのは、あれこれ勉強を教えてくれた彼女の影響だ。
子どもの姿は美しい。私の身体を撮影し続けた彼女みたいなことはしないが、脳内で繰り返し、診察される幼い蝶の姿を毎年、私は堪能する。今のところ彼女が逮捕されたというニュースは聞いてなくて、私も性癖は、可能な限り隠して生きていこうと思う。
十月にも蝶は飛ぶ。私は秋の蝶をこよなく愛し、淫らな妄想を愉しみながら生き延び続ける。