フードの女とゴツイ男
物語が少しだけ進みます。楽しんでください!
どれくらい歩いただろう。実際にどれくらい経ったかは、分からないが恐らく30分ほど歩いている。車にしてもそこそこ走って居るくらいの距離は歩いたはず。だが、まだ一向にギルドらしい建物は見えない。
「あのおっさんは見ればわかるって言ってたけど…。これまだ先なのか?」
いくら高校生とはいえ流石に疲れてきた。一旦休憩することにした。
「とは言え、ここら辺で休めそうな場所あるか…?俺お金持ってないし…この世界のお金知らないし…」
30分も歩いたので流石に商店街は抜けていた。だが、そのおかげかそのせいか、周りには何もない。コンクリート製の建物が立っているくらいだ。人通りも少ない。休めそうな場所はもちろんない。
「…もう少し歩くか」
疲れを我慢し、さらに進むことにした。
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さらにどれくらいが経っただろうか。かなり歩いたおかげか周りの雰囲気も少し変わっていた。
「…ギルドはこの先にあるのは間違いなさそうかな。あれどう考えても冒険者って面構えだもんな。」
いかつい男。強そうな女とよくすれ違うようになった。彼らはみんな腰や背中に弓や剣などをぶら下げていた。これが冒険者ではないのならあまりにも物騒すぎる。
「…こえぇ、歩きたくねぇ、てか疲れたし」
ゆっくり歩いていると道のはじにベンチのような椅子が見えた。
「まぁ、しゃーないしここで休むとするか…。」
俺はゆっくりと腰掛けた。お腹も空いたし喉もカラカラ。でもそれを買うお金すらない。改めてお金の大切さを知った。
「あぁ…。やる気でねぇ…。家帰りてぇ…。異世界テンションあがんねぇーよ。」
色々な気持ちを紛らわす為に俺は周りをじっくり観察する事にした。人間観察はよくやっている。別に好きなわけじゃなくただ、人より人目を気にしすぎるタイプなだけだ。そう言う人間はよく周りを見てしまう。
「…こわ、あいつナイフ舐めてんだけど。おいしかねぇだろ、あの人足なっが!モデルよかモデルだろあれ…。男いかつい顔のやつばっかりだけど女は基本美人が多いな、可哀想に…。」
観察とツッコミを心の中で永遠に続けていた。これもよくやっていることだ。
「あの人ボロボロのフードかぶってる。明らかに怪しいだろ…。雰囲気女っぽいけどなんか悪いことするんかな?」
ボロボロのフードで顔を含む全身を隠している。流石に気になるのでつい目がいってしまう。
「あ、目の前の路地裏に入った。絶対なんかやらかすぞこれ…。」
彼女?を目で追っていると、奥から明らかにゴツゴツの男が彼女の横を通ろうとしている。
「あいつはやべぇ、関わったら間違いなく終わりだ…。」
するとゴツい男とフードを纏った女が見合う形で止まった。
「…ん?」
さらに観察を続ける。何か話しているようだ。流石に内容までは聞こえないが、フードの女は少し震えているようだったのはここからでもわかった。
少し話したのちゴツい男はガシッとフードの女の腕も掴む。
「え?あれやばくないか…?」
明らかに絡まれている。連れてこうとする男に女はなす術がなさそうに引っ張られる。
こういうのもなんだが俺は基本問題に首を突っ込まないタイプである。心でドンマイ、運が悪かったね、なんて思って無視する。元の世界でも当然見つけても無視。無視をする。気にならない。もちろん。
「ねぇ?おっさん。それって同意の元なの?」
…びっくりした。何より自分に。いつの間にか俺は2人の前に立ちはだかっていた。
………。
が、普通に無視された。
「っておい!!!聞けよジジイ!!」
らしくない大声でさらに声をかけた。
「おぉ、なんだお前。急にでかい声出しやがって…。」
ゴツい男はこちらにびっくりした模様。でもすぐに冷静にこちらを睨みつける。
感じたことのない。これは多分殺気とか言うやつだろう。俺でもビリビリと感じる。
「だから、それ…。やってることはその子の同意のもとか?って聞いてんだよ!」
ここまで来たら当たって砕けろ。こちらも強気な姿勢で対応する。
「同意…?あぁ、なるほどな、こいつを助けに入ったってわけか」
「まぁ、場合にもよるけどそうなるな。明らかにその子震えてるし、無理矢理だろ?」
慣れているのかこの状況でもゴツい男は冷静だった。フードの女は何か言いたそうにしていたが、うまく声が出ないらしい。
「まぁ、勘違いするのも無理はねぇ」
「なにが?」
流石に勘違いで済ますのは無理がある。2人に面識があったとしてもあまり良くない関係であることは間違いない。
「俺はな?こいつの親なんだよ」
「…親?」
「そうそう、こいつ、最近行方がわからなくなってな、探してたんだよ。そして丁度見つけたってわけだ。親なら子供を連れるのは普通だろ?」
………。
「…え?別に普通じゃないだろ」
「なに?なにがいいたいんだ?」
男は驚いたように俺に問いかけた。
「まず、子供は親の所有物じゃないから。それにその子が家から出て行ったのならお前の事好きじゃないんじゃないか?それかお前になんかされていたか。どっちにしろまずそこが普通じゃないだろ?なら、無理矢理連れ帰るのは親だとしても普通じゃないな。土台から普通じゃないのに」
「他人のお前が首突っ込むことじゃないだろ?」
「親だって血が繋がってるだけのただの他人だろ」
次第に男の顔が強張っていく。みてわかるほどに不機嫌になっている。
(これどうしようかな。このまま普通に説得的な話をしてても状況は動かなそうだぞこれ…。)
こいつをボコボコに…、できれば苦労はしないが俺は喧嘩なんてしたことないし多分人より弱いくらいだ。痛いの嫌だし。
「これ以上話してても拉致があかねぇな…。どうすんだ?やんのか?」
やるわけ無い。殺されるのは確実。でもこうなったらまともに話を聞いてくれそうにない。
俺はチラッと後ろを見た。そして人がいないことを確認した。あまりしたくは無かったのだがこうなっなら一か八かの博打にでるしかない。
小さく深呼吸をして呼吸を整える。
「…はぁ、やるとかやらないとか。バカは結局脳筋かよ。俺あんましらねぇけどお前やってることモンスターと変わんねぇぞそれ?この世界じゃゴブリンとかかな?もっと脳みそ使えよ肉塊」
………。
「なんだ?黙ってんじゃねぇよ?何罵られて気持ち良くなってんだよ丸焼き、お前さ、親とか嘘だろ?そんな面で女できるわけねぇもんな!あ、そっか!顔面崩壊してるやつはそうやって無理矢理やんねぇと相手にもされねぇのか!辛すぎんだろ。でもその子が可哀想すぎるな、お前の相手とか、泥水啜る方がまだマシじゃね?そんなに溜まってんならメスのゴブリンでも襲えよ、気合うんじゃね?」
………。
(…言いすぎたかこれ。)
全身が痛いほどにビリビリするほどものすごい殺気。血管が浮き出るほどに頭に血が昇っている。
「…遺言はおしまいか?」
「なに?聞こえねぇよ、しゃんと喋れボケ」
「……………コロス」
その瞬間俺はダッシュで逃げた。取り敢えずもう無我夢中で逃げた。
後ろを少し振り返る。
「まてやぁ!!!ごらぁ!!!!」
まさに鬼の形相。半端ではないほどの勢いで俺を追いかける。男の近くにフードの女の姿はない。とりあえず引き離しには成功した。もし俺の勘違いなのであればあの子はあの場所に残っているだろう。でもそうでないなら、この選択で正解だったことになる。
いや、俺的には不正解すぎる。
走っていると少し人が増えてきた。上手く避けながら全力で逃げる。スタートダッシュは切れたのでそうすぐに捕まることはなさそうだ。
俺はもう一度後ろを振り返った。ゴツい男はもう俺の目の後ろまで来ていた。
「嘘だろ!?速すぎるだろ、なんだそれ!!」
この世界じゃ恐らくこれくらいの身体能力は普通なのだろう。元の世界でいうところのオリンピック選手なんかがこの世界ではうじゃうじゃいる。基本性能が違う。
「はぁ、はぁ…これは…もう無理…。」
歩き疲れもあってかもう体が動かない。息も上がりすぎている。
流石に諦めた。こればかりは無理だ。死んだ。
俺は走る足を止めた。
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