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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第四章 蛇と黒猫
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20 落とし物


 支配人的最優先任務についたが、相変わらずオレは大した仕事もなく、ご一行様を先導するだけの仕事である。注意事項の説明や遺跡の解説も一緒に来たデルシー専属職員がやってくれてしまうし。

 だが、一つ仕事を見つけた。ララが何かを咥えて持ってきたので、ワトスンを呼び出してララのところに行って、解説することにした。


「ララが何かを持って来てくれましたが、ドルフィーたちが人の落とし物を届けてくれることがあります。ワトスン」


 腕輪のワトスンがぴょんと飛び跳ねたら、ララがオレが指したあたりの位置にある箱に、持ってきたものを入れてくれた。


「賢いドルフィーたちは、拾ったものを箱に入れてくれますので、回収して調査の上、持ち主が見つかったら返却しています。デルシーのその他情報掲示板で落とし物情報が公開されていますので、落とし物をしたことがある方は一度ご確認ください。

 ただし、海を汚すとドルフィーたちに嫌われてしまうので、なるべく落とし物をしないよう気をつけましょう」


 ララにありがとうと合図したら、くるくる回って芸をして嫁と一緒に去って行った。ララは愛想がいいし愛嬌があるから、出て来てくれると大人気だ。


 ドルフィーが落とし物を拾ってくれたと盛り上がる客たちを連れて戻る前に、同行していたデルシー専属職員に落とし物をすぐに回収してくれるよう頼んだ。

 ドルフィーたちは誰もいなくても回収箱に落とし物を入れておいてくれるので、定期的に箱の中を確認している。だから、ララがわざわざオレに見せに来たのが気になった。


 ご案内を終えて私服に着替えてから、落とし物を置いておく取得物保管室に行ったら、オレが予定外行動をとったからか支配人が来た。

 デルソレでの潜入捜査がどうなったのかも気になっていたので聞いてみたが、支配人は、オレをデルソレに行かせることはあり得ないのでローゼスたちに任せておきなさいと言ってはぐらかした。


「オレも状況を把握していないと、不測の事態に対応できないぞ。ドルフィー狙いの場合、オレの協力は必要だろ?」


「ドルフィー狙いの可能性は低いと思いますが、無いとは断言できませんな。ところで、ララが落とし物を持ってきたそうですが、それを待っているのですかな?」


「ララがオレに見せに来たから気になって、すぐに回収してもらうよう頼んだ。ドルフィー狙いの誘拐計画でもあるなら、標的を物色する際に海に何か落しているかもしれないから、最近の落とし物リストも確認しておくつもりだ。それこそ可能性は低いだろうけどな」


「さすが旧世界管理局が誇る捜査官でございますが、デルシーにはあくまでも休暇でおいでのことをくれぐれもお忘れなく」


 仕方ないという顔で支配人が話してくれたが、オレが支配人的最優先任務に行った後、取りあえずの様子見のためにロージーがミヤリとリマを連れてデルソレに行った。

 

 デルソレの招待状は、招待客が二人まで同伴できるそうだ。

 怪しい男たちを目撃した新人三人のうちの誰かを連れて行くのは確定だったが、女好きのロージーが男のマークを連れて行くのは怪しまれるだけだ。ミヤリかリマの二択だったが、二人連れて行けるなら、二人とも連れて行くのがロージーである。ロージーは女性相手には公平かつ懐が広いのだ。


 残された男三人は釣りに行った。ということにして、誘拐現場がデルソレである場合の逃走経路など現場の状況を確認しに行った。

 マークたちは秘密の釣り場に釣り竿と魚を全部置いて報告に戻って来たので物品の回収が必要だし、魚を持って帰ってきたらつじつまが合う。

 

「警備局長は許可と承認だけして、後は好きにやりなと若者たちに託されました。わたくしも困ったら相談に来るようにと言って、見守っているところです」


「二人とも心底やる気が無いが、デルソレは世界管理局の監督の元、有志個人が集まって作ったのだったか」


「ゆえに警備局の警備対象ではなく、警備も個人的に手配すべきものですし、誘拐事件を起こさせてしまう責任もデルソレにございます。

 施設の運用や警備体制について指導監督する立場にあるのは世界管理局ですし、わたくしにしろ、警備局長にしろ、勝手に手出しする権限も理由もございません。

 とはいえ、誘拐と聞いて、良心に従って事態解決に奔走しようとする若者たちの純真な心は好ましく感じますので、やめろとは申しませんし、可能な支援はいたしますぞ。

 ただし、ユレスは休暇と遺跡ご案内に専念することです。誘拐事件が発生したとしても、警備局の仕事ですからな」


「分かってはいるが、警備局捜査課のアレク捜査官は、休暇中のせいかやる気皆無だぞ。デルソレの招待状を貰っているなら、事件発生に備えてデルソレ入りしてもいいと思うんだが」


「アレク捜査官の心情にも配慮なさい。アレク捜査官が遺物展示交換会のことで、時事情報放送の取材に応じたのも見ていないのですな?お相手がいるかという話になったときに、小さなレディが成人するまで待てるくらいには気が長いつもりですと言っておられたのですぞ」


「はぐらかしたにしても、ぎりぎりじゃないのか?下手したら少女趣味を疑われそうだが、遺物展示交換会の会場でも誘われたり、結婚相手を押し付けられかかったりと大変そうだったから、小さなレディを盾に使いたいのは分かる。

 アレクが出会いと見合い目的の交流場であるデルソレに行ったら、遺物展示交換会以上に大変なことになりそうだが、潜入捜査のためにオレを女装させたように、捜査のためと思って割り切ってくれればいいものを」


「全然わかっておられませんな」


 お説教が始まりそうだったが、ララが持ってきた落とし物が届いたので助かった。持ってきた職員が真剣な顔をしていることから、支配人もそちらに意識を切り替えたようだ。


「問題発生ですかな?」


「残念ながら。旧世界の危険物です。ユレス、ララにこれをどこから持ってきたか聞ける?自分でも無茶振りだと思うけど」


「取りあえず、ワトスンに聞いてみる」


 呼ばれたと判断したのか、腕輪から子守猫が立体映像を投影して、にゃあと鳴いた。我が相棒はにゃあとしか言わないが、多くの情報を把握しているし、高度な機能を駆使している。


 他のAIに猫語というかワトスンの言いたいことを翻訳して貰ったり、地道にワトスンとのやりとりを記録して、ワトスンの言語化されない思考の翻訳機能をオレの腕輪に組み込んではいるのだが、ほとんど役に立たないのが現状である。

 ワトスンはにゃあとしか言わないからだ。あらゆる思考が、にゃあに収束するので、翻訳しようと考える方が無謀なのかもしれない。


 遺物を持って来てくれたデルシー専属職員と支配人のAIも呼び出して、ワトスンの言いたいことを解釈してもらいつつ何とか状況を理解した。

 苦労して時間をかけた割には、一文に収束するのが虚しい。


「デルソレ周辺から持って来たようだな」


「自然動物と旧世界AIと人の間の異種族交流の限界に挑んだ気がいたしますが、わたくしもそう解釈しました」


「ワトスンはすごく賢いと思うんだが、旧世界的よくあるネタだが、何故、にゃあとしか言わない設定にしたんだ、旧世界人。尖り過ぎだろ」


 取りあえずこの件は支配人預かりになって、オレと支配人は支配人室に向かいながら視線を交したが、互いに分かっている。

 これは、旧世界管理局も放置できない状況だと。


 支配人室に入ったところで、早速報告することにした。これは旧世界管理局捜査官としての職務の範疇だ。


「機能不全になっているが、旧世界の軍事用爆発物、海水による劣化が軽微だから、海中にあった期間は短い。デルシー周辺海域の旧世界遺跡の存在は徹底的に調査済みだから、未発見の遺跡から流出した可能性は低い。

 遺物鑑定報告書を作るならこういう感じになるが、注釈のところに、デルソレから流出した可能性が高く、誘拐が計画されている情報がある現状では、デルソレで犯行に及ぶ際に使用される予定であった可能性が否定できない、と付け加えておきたい」


「落とし物のついでに事件を拾うものではありませんぞ。ですが、いたしかたありません。旧世界の軍事用遺物が出てきた以上、旧世界管理局の調査案件となりますので、局長に報告してクレア捜査官をお呼びします。軍事用兵器となれば、クレア捜査官が専門ですからな。ユレスは休暇です。日程がぎっちり詰まっておりますので、遺物鑑定報告書もクレア捜査官にお任せすればよろしい」


「そろそろ優先順位を見直した方が良くないか?」


「見直すとしたらユレスの休暇日程の方です。予定に少々狂いが出そうですので、多少組み替えた方が良いかもしれませんな」


 デルシーでは、オレの日程は完全に支配人が握っているのだ。いかなる事態の渦中であっても。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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